梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

中国人民解放軍のDX

中国人民解放軍は、5つの戦区(東・西・北・南・中部)に統合作戦指揮機構があり、陸軍・海軍・空軍・ロケット部隊が統合運用される仕組みになっている。実戦力である4軍種の他に、2つの支援部隊「戦略支援部隊」「中央軍委聯勤保障部隊」がある。 今月、…

AIは人類の能力を高める!

AI

昨年の生成AIの登場は、いろいろな社会的ムーブメントを引き起こした。極端なものは「シンギュラリティ」がやってきて、人類が滅ぶのではないかというもの。そこまではいかなくても、誰でも新しいテクノロジーに対しての恐怖感はあったと思う。一般にAIと人…

生産過剰の解消は難しい

今月に入って、米国のイエレン財務長官、ドイツのショルツ首相が中国入りし、習主席らと会談をしている。中露vs.欧米というイデオロギー対立は、正直大きな問題ではなく各国共足元の経済をどうするかに着目している証拠だ。会談の目的については、中国からの…

大きな枠組みの議論を期待する

先週、日本にセキュリティ・クリアランス(SC)制度を導入する「重要経済情報保護及び活用に関する法律案」が衆議院を通過し、参議院に送られた。この制度に関しては、私も2年ほど研究してきて、 ・機密情報を、例えば重要インフラのサイバー防御に使うため…

ひとつの帽子、複数の帽子

企業で、サイバーセキュリティ対策を担う役員(or準役員)であるCISO。比較的新しい役職であり、業種等によってさまざまな位置づけがあって、職責・権限も百人百様である。私たちはCISOを応援する立場で、CISO同士が意見交換し本音を語れる場を設けたり、CIS…

耐震化だけではないミッション

今月から、上水道の整備・管理業務が、厚労省から国交省に移管された。以前から下水道は国交省担当だったから、上下水道の管理元・責任元が一元化(*1)されたわけだ。当面焦点が当たっているのは、今でも断水地域が多い能登半島地震の普及や、他の地域でも…

「ボスが来たボタン」は無意味

あるメディアの企画で、クライアント管理ツールを主力製品としている企業の役員と対談することになった。同社の製品は「COVID-19」禍でテレワークが爆発的に増えた時期に市場を広げ、タクシー車内でのCMなどよく見かけるようになっている。 テレワーク状況を…

スマート家電が乗っ取られた?

このところのエレクトロニクス製品は、ほぼすべて小さなコンピュータを内蔵していると考えられる。それによって、自動車も家電もずっと使いやすくなった。メンテナンスも楽になって、相対的なライフサイクルコストも下げることができた。その一方、新しいサ…

民主主義国家ゆえ致し方なし

何度か、中国企業バイトダンスが提供するSNSアプリ<TikTok>の危険性について紹介してきた。公表されないデータも含めて、利用者の情報は習政権に筒抜けになる(*1)と思っておくべきだし、偽情報拡散の道具に使われたり、場合によってはサブリミナル映像を…

国家情報法下のクラウド事業

中国企業は共産党政権からの要請があれば、自社が保有するデジタルデータを提供しなくてはならない。習政権はサイバー空間にも中国の国家主権があると主張し、国家統制を強化する政策を2010年代に次々と打ち出した。そのひとつが、この法律「国家情報法」で…

日本にデータセンターを作るには

訪米中の岸田総理は、大統領との会談や議会での演説のほか、産業界の要人とも会談している。代表格がMicrosoftのブラッド・スミスCEO。同社は、総理との会談の後に、日本でのデータセンター投資(*1)を発表している。 日本でのデータセンター新設/投資は、…

国連専門機関では、AIの定義を

ガザ地区の状況は、飢餓などは一層深刻になっているが、イスラエル軍の攻撃はやや緩和されているようだ。避難民がひしめき合っているラファ侵攻は行われず、イスラエル軍はガザ南部から撤収しているとも伝えられる。これは明らかに、NGOの<World Central Ki…

異例の裁判官弾劾裁判

先週、国会内の裁判官弾劾裁判所が、仙台地裁の岡口判事に対し「罷免」の判決を下した。裁判官というのは、法曹界の中でもひときわ狭い世界で、他の世界との交流も少ない。司法修習生を終えるときに、道を選ぶのだが、 ・検察官は職務がハード、捜査検事など…

ニュース映像をじっと見ている

マグネチュード7.7とは、かなり大きな地震だった。震源地は台湾島東部のすぐ沿岸、花蓮県では12人ほどの犠牲者が出たという。年初の能登半島地震もマグネチュード7.6だったから、ほぼ同じ規模。しかし能登半島地震で245名もの犠牲者が出たのに比べると、人的…

1000倍のレバレッジ経営!

先月、電子商取引(EC)大手ベスト10に、中国企業が名を連ねているが、中には怪しげなものもある(*1)と紹介した。特に日本でも急伸しているのが「Temu」というサービス。創業は2022年9月というから、まだ1年半しか経っていない。激安ECサイトで、中国の…

移民大国米国のブランド

昨日、サイバー攻撃による一次被害・二次被害・企業ブランド棄損の連鎖について紹介したが、先月のボルチモア港の衝突&橋崩落事故でも、似たような連鎖があり得ると思った。 事故原因は、電源異常によりコントロールを失った船が橋脚に激突したもの。サイバ…

一次被害・二次被害、そして・・・

サイバー攻撃の脅威は世界中で高まっていて、被害が増えていることも確かだ。しかし実際にどのくらいの「被害」があったのか?その被害額についての情報は多くない。ある業界団体の調査では、ケース毎の平均被害額がレポートされていた。 ・Webサイトからの…

暗号資産課税の攻防

国レベルの政府・行政機関の役割として重要なのは、社会福祉政策でも産業政策でもない。まずは防衛・外交・収税・通貨である。このうち収税以外の3項目は、直接票につながらないので、政治家には重要視されないという問題がある。ただ税金に関しては、有権…

三方一両損の政治改革

自民党の裏金問題で、政界全体が揺れている。立憲民主党の泉代表は「ミッション型内閣」を提唱しているが、その実現性は低い。維新の会や国民民主党は、憲法・原発・国防など基幹政策で合意できないと、連立は難しいとしているからだ。私も、少なくとも外交…

紙幣のセキュリティと事業者の負担

気が付けば、日本の新紙幣発行まであと3ヵ月しかない。現役時代ATMの製品企画・事業企画に携わったことがあり、紙幣切り替え時の苦労について多少は分かる。 ATM等関連機器の開発部署では、発行前から厳重な管理の下で新紙幣サンプルを貸与してもらい、鑑別…

今は100m走に40秒かかるのだが

SF小説は、マイクル・クライトンという作家の登場あたりから、 Science Fiction ⇒ Science Fact に替わってきた。日本語訳だと「空想科学小説から近未来科学小説に替わった」と言ってもいいかもしれない。そしてさらに「近未来」の言葉も消えるかもしれない…

三位一体のリスクマネジメント

先月、NIST(米国国立技術標準研究所)のサイバーセキュリティ・フレームワークの改訂版が発表された。いわゆる「NIST CSF 2.0」である。まずタイトルが、「重要インフラのサイバーセキュリティを改善するためのフレームワーク」から重要インフラの文字が消…

規制では寡占は防げない

生成AIがいろいろな分野で利用されるようになって、その分野に特化したものも登場してきている。一方、AIの急速な発展と利用分野の広がりに対する懸念もあり、規制論も具体化しつつある。代表的なものは欧州委員会の「AI Act」だが、国連もAI兵器規制を考え…

アルゴリズムへの逆風強まる

このところ欧州で、ITシステムに関する批判がいくつか巻き起こっている。典型的なのは、富士通の英国子会社(旧ICL)が納入したポストオフィス向けのシステムで、多くの冤罪被害者が出た事件(*1)。会計システムのバグで、お金の帳尻が合わなくなり横領を疑…

「Grafsec」全国大会

社会全体のサイバーセキュリティ耐性を高めるには、小規模企業や地方の産業での対策強化が必要である。しかし、ヒト・モノ・カネ・情報がふんだんにある大企業/首都圏と違い、当面十分とされる対策も行うのが難しい。そんな状況を改善しようと、10年も前か…

中国ECサイトのリスク

中国で注目の「全人代」が閉幕したが、経済の低迷を受けてかやや変調らしい。最終日に行われる首相のメディア対応も、今回は行われなかった。市民も生活防衛を進めていて、高級品市場が縮小。大きな売り上げを揚げていた日本の化粧品メーカーも、苦戦してい…

AI課税の対象となるのは・・・

昨日に続いてAI関連の話題。AI活用は、ホワイトカラー層の雇用を奪うとされる。ゴールドマン・サックスのトレーダーが、AI導入で600⇒2名になったのがその典型例。放置すればごく一部のAIを駆使できる人と、その他の人の格差が広がると懸念されている。そこ…

生成AI活用現場のリスク

昨年<Open AI社>の生成AI「Chat-GPT4.0」が登場して、一気にAIブームが巻き起こった。あれから1年近く経ち、そろそろ実際に業務に使われるようになって、いくつかの冷静な知見がたまってきたころだと思う。今回、AIのリスク管理を看板にしているベンチャ…

「TikTok」の目に見えるリスク

昨日に続いて、米国の「TikTok」規制のお話。トランプ候補の擁護発言(*1)にもかかわらず、下院では、中国系企業「バイトダンス」に半年以内の売却を命じる規制法案が、352対65の圧倒的多数で可決成立した。まだ上院でどうなるかは分からないが、可決されれ…

他に候補者はいないのですか?

今年は米国の4年に一度の大統領選挙の年だ。通常お祭り騒ぎが年初から、スーパーチューズデーで中間盛り上がりをし、11月の本選挙に向けて広がっていく。しかし、今回は両党とも候補者が決定的になり、当面話題がない。だから人気があるとはいえ、政治家で…