梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

IPEF、ようやく第一歩

昨日、一昨日に続いて、サーバローカライゼーション規制に関する話題をもうひとつ。ちょうど1年前に、インド太平洋経済枠組み(IPEF)が発足した。 IPEFはTPPがいやだから・・・だけ? - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com) 発足時は13ヵ国(*1)だったが…

特許権の域外適用

先週に引き続き、デジタル裁判の結果をもうひとつ。今度は国内の結果である。動画配信サービス「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが、動画にコメントを流す特許を侵害されたとして米国FC2らを相手取って起こした控訴審が、一審判断を覆してドワンゴ勝訴とな…

ASEANのデータ流通拠点

先週日経紙が、日経フォーラム第28回「アジアの未来」の模様を伝えた。晩さん会での岸田総理のスピーチには、 ・G7広島サミットの歴史的意義 ・自由で開かれたインド太平洋(FOIP) ・ASEAN地域での連携強化 が含まれていた。特に最後の点については具体的に…

米国通信品位法第230条

先週「Google・ゴンザレス裁判」として知られる訴訟が、米国最高裁で結審した。私も含めて、デジタル政策の関係者はほっと胸をなでおろしている。この裁判は、 ・2015年、ISISがパリでテロを起こし130人ほどが犠牲になった ・ISISはYouTubeを利用してテロを…

「広島ビジョン」の評価

例えば東西冷戦のピークだったキューバ危機(1962年)以降、久しぶりに世界は核戦争の脅威に向き合っている。戦略核兵器1,500発以上を保有する大国ロシアが、核の使用をちらつかせているからだ。緊張が高まることによって、偶発的な事故や誤認が核戦争に発展…

中国もサプライチェーンリスクを意識

何度か「サプライチェーンリスク」の中で、納入製品・部品にリスクが内在されていることについての議論を紹介している。いわゆる西側諸国では、特に世界の工場である中国でそのような製品・部品が製造されているのではないかとの懸念が高まっている。しかし…

そのDRAMは何に使われるのか?

G7広島サミットの関連でだろう、米国マイクロンテクノロジーの広島新工場に日本政府から2,000億円が支援されることになった。米国のエマニュエル大使は、 「中国の威圧に対抗する先例となる」 と賛辞を送っている。そこで何が製造されるかというと、DRAMであ…

「広島AIプロセス」を歓迎

広島G7サミットが閉幕し、ウクライナへの支援やロシアへの非難、中国を念頭にした経済威圧への対応、金融不安の払しょくなどが議論・決議されている。その中に「信頼できるAI」を求めて、広島AIプロセスを進めるという項目があった。 飛躍的な発展を続ける生…

Queensland大学訪問

AusCERTの全日程を終了し、私たちは次の目的地に向かった。日豪対話の会合で極めて大きな役割を果たしてくれた、Queensland大学(UQ)のキャンパスを訪問するのだ。ゴールドコーストからブリズベンまでは、高速道路で1時間強。出迎えてくれたのは、日豪対話…

サイバーセキュリティ日豪対話(後編)

パネリストには早々に了解をもらい、2週間前には説明用のスライドも用意できたのだが、台湾の人の渡航許可が下りなかった。そこで、彼だけはオンライン参加としてもらうことにした。 横長の部屋に小さな演壇を設けてもらい、パネリストは着席状態でプレゼン…

サイバーセキュリティ日豪対話(前編)

今回のオーストラリア出張の最大の目的は、ゴールドコーストのリゾートホテル(The Star Hotel)でのサイバーセキュリティの日豪関係者が集まる会合。AusCERTの年次総会に合わせて開催されたもので、運営に携わったのは以下の団体。 ・オーストラリア政府 ・…

Western Sydney大学訪問(後編)

小さなSOC部屋を設け、設備を整えている。最大6名の学生が作業にあたることができる。その部屋を見せてもらって、日本の状況も説明して議論した。興味を惹いた発言がいくつか、 ・政府のWebサイトは、巨大だが役に立たない ・ソリューションは安ければ安い…

Western Sydney大学訪問(前編)

今週はオーストラリアに来ている。荒れ模様で強風に豪雨が打ち付けるシドニー空港に、昨夜降り立った。市内のホテルに入って、ぐっすり眠りはしたものの、あしかけ4年ぶりの海外出張はけっこう堪える。この日は、中央駅から30分ほどのParramatta駅近くにあ…

プラスAI人材のススメ

このところ、生成AIに関する話題が尽きない。「リスクはあるけど、まずは使ってみよう」と言うのが正しい姿勢。もちろん、機密情報を入力させないとか、悪事に利用しないというガバナンスは必要だ。 ブームが起きると、必ず人材不足~争奪戦のようなことが起…

生成AI、悪用のおそれ

先週米国バイデン政権が、AIの安全性は企業に責任があるとして政府方針(責任あるAIイノベーションを推進する新たな行動)を示した。先端的なAI開発企業の中でも、安全性に関する危惧は高まっている。世間一般に言われるような、 ・多くのホワイトカラーが職…

「DFFT」4文字のどこに軸足が

先月末のG7デジタル相会合で議論になったことに、DFFT(Data Free Flows with Trust)がある。産業界はずっと「国境を越えるデータの確保」を求めて来て、それをTPPに入れ込む努力をしたことを、以前紹介した。 TPP第14章に込めた思い - 梶浦敏範【公式】ブ…

パートナーシップ構築宣言

サイバー攻撃によるリスクが高まる中、主要な納入業者が攻撃を受けて、部品やサービスの提供が停まる可能性を以前に指摘した。これもサプライチェーン・サイバーセキュリティの主要なリスクである。 経営者がサイバーリスクを認識し、しかるべき資源(ヒト・…

生成AIの人月商売への影響

「ChatGPT」を始めとする生成AIの得意分野の一つがプログラミング。自分の書いたコード(プログラム)を登録すると自分のプログラマとしての評価が得られるサービス「GitHub」などもあって、インターネット空間に蓄積されたコードの量は測り知れない。それら…

Decentralized Systemの信頼性

中央管理者のいないシステムは、一般的に効率的になる。コンピュータの学界としては自律分散学会が追及しているもので、メインフレームを中心としたCentralized Systemから、個々の端末機が能力を高めてネットワーク化したDecentralized Systemとしようとい…

産業界の期待に一番近い国

高崎市で開催されていた、G7のデジタル相会合が終了した。7年前の会合は高松市で行われ、私自身も民間会合(B7)のお手伝いをした。その時は国境を越えるデータの重要性と、サイバーセキュリティをテーマに議論したのだが、今年はAIに注目が集まっている。…