梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧

磁気乗車券(切符2.0)の終わり

この冬の<青春18きっぷ>から、種々の変更がされて、ファンの間では「改悪だ・実質値上げだ」との悲鳴が上がっている(*1)。確かに僕もそう感じるのだが、自動改札を通れない旧券は、無人窓口が増えた首都圏では面倒な面もあった。JRとしてこの目的は、自…

もし中選挙区制度だったら

先の総選挙で落選していた自民党甘利明元幹事長が、政界引退の意向を表明(*1)した。決して選挙に強い人ではなく、比例復活などで議員のイスを際どく守ってきたのだがその策もついに尽きたようだ。今後も政策活動は継続し「半導体に注力」と仰っている。 こ…

「うっかり」を含め従業員を護る

この日は、ある重要インフラ事業者のCISOさんの話を聞く機会があった。インフラ事業は基本的にBtoC、普通の企業とはケタ違いの量の個人情報も持っている。また研究開発もしているから、機密情報も少なくない。 だからインフラを止めない事業継続と同様、情報…

経済合理性が通用しない部分

経済安全保障の議論が、サイバー分野でのリスクの話と頻発する国際紛争の話にからんできて、最近軍事の専門家と意見を交わすことが増えてきた。そんな会話の中で軍事の専門家が、 「99.9%のことは経済合理性で決まるんです。でも0.1%は経済合理性では決め…

ロイヤルメールが大陸資本になる

今日はX'mas、欧米の友人たちは今でも「X'masカード」を交換しているのだろうか?多分カードの取り扱いが減っているだろうと、現役時代多少縁のあった英国<ロイヤルメール>の業績を慮っていたら、こんな記事が目に付いた。 英ロイヤルメール、チェコの実業…

予兆を知る民間インテリジェンス

中国やロシアの政治・軍事事情に詳しい、専門家の話を聞く機会があった。彼らは全て公開情報から、練達の分析能力でインテリジェンスを作り出している。かつてWWⅡでD-Day直前に、連合軍は上陸地点周辺のドイツ軍機甲師団に位置を知りたいと諜報に努めた。ド…

デジタル赤字報道への懸念

私たちはブロック経済のリスクを憂えているが、インターネット経済は基本的に世界でひとつ。国別シェアという考え方は、あまり意味がない。ところが貿易統計にはデジタル貿易なる項目があって、日本のこの分野の赤字が大きいとの報道が目立つ。例えば、 デジ…

民間でも「Active Cyber Defense」

ようやく日本の国会で「Active Cyber Defense」の具体策が議論され始めた(*1)。少数与党ではあるが、経済安全保障の話は与野党の別なく議論を促進してほしいものだ。民間企業としては「また政府から規制など加えられて対応に追われる」との不安もあるのだ…

サイバー分野の「Return to Technology」

ここ10余年、サイバーセキュリティ政策研究に関わってきている私だが、セキュリティ技術者ではない。専攻はコンピュータサイエンスだったが、私が研究&技術者だったのはインターネットの黎明期まで。もっぱら、デジタル技術を活かして、社会をどう変えるか…

「Helsing」のLAWS兵器、ついに参戦

国連のグテーレス事務総長は、2018年の時点でLAWS(自律型致死性兵器)に嫌悪感を示し、何らかの規制が必要だと言い始めた。AI技術によって人間の意思決定を経る必要がなく相手を攻撃するLAWSは「核兵器と同レベルな問題だ」と危機感を募らせる識者もいる。…

製造業の空洞化はここまで!

選挙中のリップサービスかと思っていたのだが、トランプ次期大統領の「日鉄によるUSスチール買収阻止」は本気(*1)だったようだ。安全保障を名目にしているが、主な目的は(激戦州ペンシルバニアの)同社組合員に対するアピールだったはず。すでに米国経済…

SUICA一枚で楽しく暮らせる街

山手線の最も新しい駅「高輪ゲートウェイ」駅周辺は、大規模な開発が続いている。現時点ではさほど多い乗降客がいるわけではないのだが、それも来春には増えると思われる。それは、この開発が一通りの節目を迎え、新しい街が開業するから。 「高輪ゲートウェ…

車に耳あり、もちろん眼もあり

自家用車を持っていないせいで、私は自家用車のサイバーリスクについて勘違いをしていたかもしれない。Connected Carになると、外部から乗っ取られて暴走したり、リチウム電池が制御不能になった爆発したりするリスクのことを心配していた。2027年製車種から…

移民は経済成長に寄与する

私たちの「Global & Digital」による経済成長政策では、国境を渡る「ヒト・モノ・カネ・情報」の自由は、最も重要な項目だ。特に情報流通が遅れていると感じた我々は、この20年ほどこの点に注力して各国政府働きかけてきた。 その他の3項目については、十分…

AIのリスク、3つのパターン

サイバーセキュリティの先端研究をしている人と、意見交換する機会があった。先日のGoogle社の専門家は、主として技術的な側面の「AIリスク論」だったが、こちらは安全保障寄りの話。国際関係の緊張もあって、サイバー空間は事実上の戦争状態だと彼は言う。…

日本の「Active Cyber Defense」動き出す

少数与党であるし、政治改革や補正予算など課題山積の臨時国会が始まっている。会期はわずか24日で、重要課題をこなすには日程がたりるような気がしない。しかも安全保障を含む国際環境は、待ったなしに難題を突き付けてくる。そんな中、ようやく日本版ACD(…

ID管理全体を見直す

サイバーセキュリティの世界市場で、特権ID管理に秀でたソリューションを提供している企業のTOPが来日した。その創業者は、これからはID管理全般に業容を広げていきたいという。システムの運用を管理し、設定等を変更できる<管理者権限>は、セキュリティ上…

穀物版OPECが標的とする国

国家が国家を侵略するシナリオの議論をした(*1)後、電力・水道・放送・通信・交通・軍事以外に、何が狙われるだろうか考えてみた。最近起きたのが<令和の米騒動>。政府備蓄米の放出を求める声もあった。経済安全保障の議論の中で、食料安保はどうかとの…

堺屋思想に立ち返って欲しい

日本維新の会の代表選挙が終わり、予想通り吉村洋文大阪府知事が代表に決まった。先の総選挙では、与党過半数割れは達成したものの、自ら議席を減らしてしまった。「第二自民党でいい」などと、与党に近すぎる姿勢が嫌われたのかもしれない。 大阪維新の会に…

Google社のシンポジウム

Google合同会社との付き合いは古い。10年以上前から、経団連とACCJ(在日米国商工会)でデジタル政策を議論してきたが、Microsoftらと並んでACCJの中核企業だった。ビッグテックの例にもれず、サイバーセキュリティ対策には熱心だし、ノウハウも人財も持って…

サプライチェーンの見える化

何度かご紹介しているように、サイバーセキュリティ対策をしていくと「自社だけ頑張ってもダメ」なことに気付く。いわゆるサプライチェーンセキュリティ問題で、 サプライチェーン・セキュリティの区分 - 梶浦敏範【公式】ブログ で挙げたようなリスクがある…

今年も「日経CIT」でモデレータを

また今年も「日経サイバーイニシャティブ東京」の中で、CISOセッションのモデレータを承った。私にとって初対面の3名のパネリストだったが、開始1時間前に集まってもらい、簡単な打ち合わせと雑談(これが重要)をして本番に臨んだ。御三方はいずれも製造…