梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2025-01-01から1年間の記事一覧

中途半端に終わった「改革」

早いものでもう大晦日。明日は年賀状が届く「元日」である。かなり減っているとは思うのだが、年賀状の時期は郵便トラフィックは平常時の3倍以上になった。受付~仕分け~配送のプロセスに大きな負荷がかかる。日本の郵便事業は、ピーク時のために過剰な設…

ヘリテージ財団が変調だとしたら

米国の政治には、「第五の勢力」とも言われるシンクタンクが大きく関与してくる。今は共和党(というかトランプ党)政権であるから、共和党系のシンクタンクが描いた政策が実行されている。軍事戦略面では、現国防次官エルブリッジ・A・コルビーが<マラソン・…

在米の日本人、日系人へのお願い

トランプ2.0政権成立から、おおむね1年が経った。まるきりアメコミのような政権運営で、よそ目に見ている分には面白いこともあるのだが、米国国内は大変だろうと思う。 ・インフレ率は下がったものの物価は高止まり、「アフォーダビリティ」は低いまま ・格…

研究者は3回やってみるべき

40余年前、私が就職した企業は伝統的な技術の会社。国産のエレクトロニクス製品を作ること、使ってもらうこと、改良すること、世界に挑戦することを国産技術/日本人技術者の手で成し遂げるという、高邁な精神を貫いてきた企業だ。その精神的な中核を担って…

「デジタルオムニバス」という贈り物

時々声がかかる、某社主催の「デジタル官民交流会」がある。長年デジタル政策を論じてきた、霞ヶ関の人・日系企業の人・外資系企業の人・業界団体の人・学界の人などが集まってくる。立場を離れて自由に意見を戦わせ、最後はパーティに突入してさらに論じ合…

AIが世界をシミュレートする

AIの研究者という人は結構多いのだが、どんな技術もスポットの技術ではなく技術の体系と未来の社会への影響を語れる専門家は多くない。今回、AI技術についての展望を教えてくれる人と意見交換できたので、そのエッセンスをご紹介したい。 質問すると迅速に(…

CNNは救われた・・・ようだ

先週香港では、2つの象徴的な事案が起きた。一つには民主党の解散。先日の香港議会選挙では、いわゆる民主派勢力の人は立候補が許されず、議会では政府(とバックにいる中国本土の共産党政権)が推薦した人と、立候補を認めた人のみが議席を得た。事実上の…

Global & Digital 時代の組織犯罪

警察庁によれば、今年の特殊詐欺被害額は1,000億円を越えた。昨年に比べて3倍近い増加だという。背景には、生成AIを使ったより巧妙な手口もあるが、国際犯罪組織がより広範な活動をしていることが大きい。いわゆる「とくりゅう」という犯罪形態が国際的に増…

海底ケーブル防御の新戦術

中国軍が台湾に侵攻するにあたり、偽情報などを通じた認知戦の他、台湾をインターネットから締め出すことも考えられる。例えば、台湾に繋がる海底ケーブルを切断することによってである。日本も台湾も、データ授受の9割以上を海底ケーブルに頼っているので…

「あのアメリカ」はもう戻ってこない

トランプ2.0政権の支持率が下降気味で、各州の首長選挙や連邦議員補選で共和党の苦戦が目立っている。インフレは収まらないし、減税も富裕層だけ、低所得者の社会保障も切り下げられ、庶民は政権の内政に愛想をつかし始めている。また、関税その他多くの違憲…

駿馬は常にあれど、伯楽は・・・

すでに2度紹介しているGoogle社の「Japan Cybersecurity Initiative」の分科会。前回の「サプライチェーン*1」に続き、今回のテーマは「人材育成」である。内閣サイバー統括室(NCO)から政府の取り組みを聞き、「プラスセキュリティ人材」という言葉を広め…

サイバー犯罪の参考になるリアル犯罪

私の所属するシンクタンクでは、A社に起因するB社のサイバー被害について、過失割合を含めてもっと簡便に解決できないかの議論(*1)を進めている。日経誌の記者さんも取材に来てくれて、ベンダーと発注企業の係争と併せて記事にしてくれた。 サイバー被害…

お酒、タバコ、ピンク映像そしてSNS

先週、オーストラリアで16歳未満の少年少女が、SNSを使うことが禁止された。SNSの禁止措置は昨年から多くの議論があり、実際に規制されたこともある(*1)。多くは政治的な意図で、政権に都合の良くない情報の拡散防止や、反政府勢力の連帯を弱めるためであ…

高まってきた企業のセキュリティ意識

この日は2つの研究会に登壇する。合計5時間の長丁場である。一つはオンラインと決まっているのだが、もう一つをどうするか迷った。それでも移動中に何かあると困ると思い、両方オンラインにしてもらった。 一つ目は、何度か紹介しているIT協会の研究会(*1…

諜報機関は必要、でもその前に

先月自民党が「インテリジェンス戦略本部」初会合を開き、国家情報局創設を含む議論を開始した。インテリジェンス機関創設については、自民・維新の連立合意書にも記載があり、本気の政策実現に向けた動き(*1)と考えられる。 共産党機関紙「赤旗」は、わざ…

Cyber Initiative Tokyo 2025 にて

毎年恒例、日経主催の「Cyber Initiative Tokyo*1」が今年も開催された。事前登録数では昨年を上回るし、今年初めて海外からの登録数が国内を上回った。今回国家サイバー統括室(NCO)の共催と、ミュンヘン・サイバーセキュリティ会議(MCSC)との提携があっ…

3,300万件以上の個人情報窃取

韓国のEC大手「クーパン」が、3,300万人以上分の個人情報を窃取されたとして、企業責任を問われている。全人口の6割を超える人が被害に遭っていて、今年起きた「SKテレコム」の2,500万人分(*1)を越える規模である。 容疑者は社内のセキュリティ技術者で、…

個人情報保護委員会への報告義務

かつてサイバーセキュリティの議論を産業界で始めたころ、私たちは最大のリスクは重要インフラ企業のサービス停止であり、多くの人が思っている「サイバーセキュリティ≒個人情報漏えい対策」ではないと主張していた。しかし昨年のKADOKAWAへの攻撃のように、…

匿名性のベールが少し剥がれて

<Telegram>というSNSは、秘匿性が高く犯罪にも多く利用されているという。それには及ばないが、SNS界の巨人<X>も、決して情報公開に前向きとは言えない。不当な投稿(要するに偽情報)に対処する「コンテンツモデレーション」にも、あまり積極的ではな…

楽しかった「Open Innovation論議」

この日は夕方から大手町のビルの一角にある、ユニークな場所にやってきた。ある商社さんが運営している「Open Innovation拠点」である。集まってきたのは、業種もまちまちの大手企業のCISOさんたち。このところ相次ぐ企業へのサイバー攻撃で、関連会社が直接…

サイバー被害と経営者の役割

アサヒグループHDが、「Qilin」と名乗る攻撃者からランサムウェア攻撃を受けて事業継続に混乱をきたしてから2ヵ月。先週に、まだ完全復旧には数ヵ月を要するとのことだが、事態が整理できたので社長らが記者会見を行った。各メディアがその模様を報じている…

シン重要インフラのトラブル

国家サイバー統括室(NCO)は、特にサイバー防御を強化する分野として、重要インフラ15分野を指定している。情報通信・金融・航空などが挙げられていて、最近「港湾」も加わった15分野である。いずれもあらぬ振る舞いをすれば人命に関わるが、単に止まっただ…

シン重点分野はどれなの?

政府は先月最初の「日本成長戦略会議」を開催し、来年夏に「成長戦略2026」を公表できるよう、議論を始めた。つまり2027年度予算概算要求で、産業分野にどう予算を割り振るかの指針を定めるということだ。 内容は17分野と8つの横断的課題を挙げて、これらに…

安保三文書改訂に向けた議論

高市政権の総合経済対策については、正直納得できない私だが、安全保障関連の動きについては、それなりに評価している。サイバー空間を含めた脅威への対応や、インテリジェンス能力の強化などは、喫緊の課題である。現在議論が始まった、大きな項目が「安保…

必要なのは患者側の意識改革

議員定数削減の連立合意がメディアで取り上げられることも多いが、1割衆議院議員の定数を削ったところで、予算削減効果は大きくない。議員一人にかかる費用は、歳費・旧文書交通費・秘書の人件費など精々4,000万円/年。他に議員宿舎などの削減があるとして…

証券口座乗っ取りの根本原因(後編)

では、なぜ今回3,000億円もの実害が生じ、証券業界が後始末に追われているのか?それは十数年前の前提が壊れていたからだ。再掲すると、 「日本の証券会社を通じて、日本人が日本円で日本企業の株式を売買する」 のではなくなっていたのだ。私は「Global & D…

証券口座乗っ取りの根本原因(前編)

今年度になって証券口座が乗っ取られる事案が相次ぎ、証券各社が対応に追われている。先日会った某社の担当役員は「初めてCEOが私の健康を気遣ってくれた」と、疲れた表情で自嘲気味に語った。被害額については教えてくれなかったが、今月になって金融庁が4…

囲碁・将棋だけではない「AI以前・以後」

囲碁・将棋の世界では、「AI以前・以後」という言葉が大きな意味を持っている。特にコンピュータがいつ人間のチャンピオンを倒すかが話題になっていたテーブルゲームの世界では、 ・チェッカー 1994年にアルバータ大「Chinook」が勝利 ・チェス 1997年にIBM…

表面化した中国製IoT製品のリスク

世界の工場」である中国からは、膨大な工業製品が流れ出してくる。他の国とは桁違いに多くの人材、設備があり、「中国製造2025」など政府施策の積極性や、その裏付けとなる資金も十分にある。その結果、高品質ながら安価な製品をこの10年以上、世界に輸出し…

SNS時代、命に係わる暴言を裁く

自殺した県議会議員を誹謗中傷したとして、NHK党立花党首が逮捕された。いわれのない嫌疑をSNSで発信して、いわゆる「犬笛」を吹いたとされる。SNS上に流れた言説を、面白半分か信じてか拡散した人が多く、県議は四方八方からの非難に晒されることになった。…