梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

テクノロジー

今は100m走に40秒かかるのだが

SF小説は、マイクル・クライトンという作家の登場あたりから、 Science Fiction ⇒ Science Fact に替わってきた。日本語訳だと「空想科学小説から近未来科学小説に替わった」と言ってもいいかもしれない。そしてさらに「近未来」の言葉も消えるかもしれない…

規制では寡占は防げない

生成AIがいろいろな分野で利用されるようになって、その分野に特化したものも登場してきている。一方、AIの急速な発展と利用分野の広がりに対する懸念もあり、規制論も具体化しつつある。代表的なものは欧州委員会の「AI Act」だが、国連もAI兵器規制を考え…

産業競争力か?安全保障か?

次世代の計算機技術として、期待されているのが<量子コンピュータ>。後述するように計算の単位<Qビット>は純粋にデジタルとは言えないので、デジタル技術の革新とは言いづらい。その入門編的な解説は、下記の書が適当だと思う。 第三次計算機革命 - 新…

自動運転の産みの苦しみ

新しい技術が開発され、実用化され、普及していく過程においてはいくつものハードルがある。リソースの規模として、私の実感は、 ・基礎的な技術を固め、なんとか利用できそうなものを完成させる開発 1 ・使ってもらって不具合がないように、安全措置などを…

デジタル社会はエネルギー革命を求む

先ごろの<ダボス会議>では、OpenAI社のサム・アルトマンCEOが「AIには原子力(発電)が必要」と発言した。AIの優秀性は知られているが、結果を導き出すにあたっては大量の電力を必要とする。脳の消費エネルギーに対して、現状の技術では数ケタ上のエネルギ…

MV-22オスプレイ生産終了

まだ数百機が現役でいるし、生産終了は2026年とまだ先なのだが、ようやくMV-22オスプレイの生産終了が決まった。初飛行以来「未亡人製造機」と陰口を叩かれるほど、事故に見舞われた機体である。先日も屋久島沖に墜落、乗員の遺体回収が進んでいるが、当面世…

技術輸出規制の目的

Huaweiの最新型スマートフォンについて、西側諸国では「信じられない」との声が出ている。少なくともハードウェアについては、Apple社のものと遜色がないと評価される。特に7ナノ級の技術を使った半導体が採用されていることに、関係者が驚きを隠さない。 …

人間関係とテクノロジー

勧めてくれる人がいて「The Good Life」という本を読んだ。およそ1世紀にわたり、総勢1,300名超の人生をトレースし、膨大なアンケート結果の蓄積を基にした「幸福の科学」である。 ハーバード成人発達研究の成果 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp) 結論は、良い…

SEMICON TAIWAN 2023

台日サイバーセキュリティ協力会議がこの日に設定されたのは、台北で大きなイベントがあり関係者が集まりやすかったからだと、スケジュールを決めた後で聞いた。そのイベントとは「SEMICON TAIWAN 2023」。半導体関連産業が一堂に会する、世界最大のイベント…

デュアルユースの重要技術課題

先週、日本政府は総合的な防衛力強化に向けた関係閣僚会議を初開催した。その中のひとつの議題として、防衛力強化に資するデュアルユース(軍民両用)技術9分野を指定し、これらの分野の研究開発を支援していくことを決めた。 軍民両用の技術9分野、関係閣…

官製アプリではイノベーションは無理

先週「Fourth QUAD Open RAN Forum」に参加して、そこでの「Beyond5G」つまり6G関連の議論について注文をつける記事を書いた。開発や設備投資を先行させても、キラーアプリケーションが育たなければ、後発国に追い越されるし普及もしない。5Gでは中国の後…

「広島ビジョン」の評価

例えば東西冷戦のピークだったキューバ危機(1962年)以降、久しぶりに世界は核戦争の脅威に向き合っている。戦略核兵器1,500発以上を保有する大国ロシアが、核の使用をちらつかせているからだ。緊張が高まることによって、偶発的な事故や誤認が核戦争に発展…

生成AI、悪用のおそれ

先週米国バイデン政権が、AIの安全性は企業に責任があるとして政府方針(責任あるAIイノベーションを推進する新たな行動)を示した。先端的なAI開発企業の中でも、安全性に関する危惧は高まっている。世間一般に言われるような、 ・多くのホワイトカラーが職…

Decentralized Systemの信頼性

中央管理者のいないシステムは、一般的に効率的になる。コンピュータの学界としては自律分散学会が追及しているもので、メインフレームを中心としたCentralized Systemから、個々の端末機が能力を高めてネットワーク化したDecentralized Systemとしようとい…

産業界の期待に一番近い国

高崎市で開催されていた、G7のデジタル相会合が終了した。7年前の会合は高松市で行われ、私自身も民間会合(B7)のお手伝いをした。その時は国境を越えるデータの重要性と、サイバーセキュリティをテーマに議論したのだが、今年はAIに注目が集まっている。…

「データ・マイノリティ」というリスク

「ChatGPT」を始めとする生成AIの登場によって、各所で議論が巻き起こっている。興味をもって使いたい人、使って良かったとする人が多い一方、ネガティブな意見も少なくない。クリエーター・芸術家・作家・翻訳者など、知的な専門職に就いている人たちからは…

企業の根幹は「信頼」

AI(人工知能)の能力向上が著しくなり、各界から驚きの声が上がっている。期待が大きいのも確かだが、それを上回るほどの懸念も伝えられてくる。イーロン・マスク氏ら1,000人を越える有識者が連名で「先端AI開発を半年間停止せよ」と提言する一方、ビル・ゲ…