梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

デジタル社会

スマート家電が乗っ取られた?

このところのエレクトロニクス製品は、ほぼすべて小さなコンピュータを内蔵していると考えられる。それによって、自動車も家電もずっと使いやすくなった。メンテナンスも楽になって、相対的なライフサイクルコストも下げることができた。その一方、新しいサ…

民主主義国家ゆえ致し方なし

何度か、中国企業バイトダンスが提供するSNSアプリ<TikTok>の危険性について紹介してきた。公表されないデータも含めて、利用者の情報は習政権に筒抜けになる(*1)と思っておくべきだし、偽情報拡散の道具に使われたり、場合によってはサブリミナル映像を…

日本にデータセンターを作るには

訪米中の岸田総理は、大統領との会談や議会での演説のほか、産業界の要人とも会談している。代表格がMicrosoftのブラッド・スミスCEO。同社は、総理との会談の後に、日本でのデータセンター投資(*1)を発表している。 日本でのデータセンター新設/投資は、…

異例の裁判官弾劾裁判

先週、国会内の裁判官弾劾裁判所が、仙台地裁の岡口判事に対し「罷免」の判決を下した。裁判官というのは、法曹界の中でもひときわ狭い世界で、他の世界との交流も少ない。司法修習生を終えるときに、道を選ぶのだが、 ・検察官は職務がハード、捜査検事など…

ニュース映像をじっと見ている

マグネチュード7.7とは、かなり大きな地震だった。震源地は台湾島東部のすぐ沿岸、花蓮県では12人ほどの犠牲者が出たという。年初の能登半島地震もマグネチュード7.6だったから、ほぼ同じ規模。しかし能登半島地震で245名もの犠牲者が出たのに比べると、人的…

1000倍のレバレッジ経営!

先月、電子商取引(EC)大手ベスト10に、中国企業が名を連ねているが、中には怪しげなものもある(*1)と紹介した。特に日本でも急伸しているのが「Temu」というサービス。創業は2022年9月というから、まだ1年半しか経っていない。激安ECサイトで、中国の…

紙幣のセキュリティと事業者の負担

気が付けば、日本の新紙幣発行まであと3ヵ月しかない。現役時代ATMの製品企画・事業企画に携わったことがあり、紙幣切り替え時の苦労について多少は分かる。 ATM等関連機器の開発部署では、発行前から厳重な管理の下で新紙幣サンプルを貸与してもらい、鑑別…

アルゴリズムへの逆風強まる

このところ欧州で、ITシステムに関する批判がいくつか巻き起こっている。典型的なのは、富士通の英国子会社(旧ICL)が納入したポストオフィス向けのシステムで、多くの冤罪被害者が出た事件(*1)。会計システムのバグで、お金の帳尻が合わなくなり横領を疑…

スタートアップ優遇にならず(後編)

「デジタル庁」発足から3年ほどになるが、彼らの努力は買うとしても、前編で述べたようなリテラシーを中央官庁が得るには、10年ほどの時間がかかると思う。さらに、行政機関特有の問題点もある。 民間・民間の取引では、資本主義の原則に従って商談を進める…

スタートアップ優遇にならず(前編)

中央省庁のシステム開発・運用は、かつては<国策SIer>に任せるのが普通だった。それは洋の東西を問わず、英国でもその傾向はあって、国策企業ICLに英国政府システムは多くの発注が流れた。ICLが経営不振に陥った後は、同じIBM互換機メーカーだった富士通が…

ブレるバイデン大統領の危うさ

「もしトラ」や「いまトラ」という現象に、世界は息を呑んで行方を見守っている。最大の問題はトランプ候補の予測不能性であって、世界秩序や常識の崩壊すら思わせる。そんな候補がなぜ強いのかと考えると、結局現職バイデン大統領が弱いからだということに…

いわゆる「ベンダー・ロックイン」ですね

先月、英国に出張していた時、富士通の子会社(旧ICL)の幹部が議会公聴会に呼び出された。700名にもおよぶ郵便局長・従業員に。ポストオフィスが公金横領の冤罪を着せたとされる事件。今年の正月TV特番で連日放映され、大きな社会問題になっていたのだ。そ…

自動運転の産みの苦しみ

新しい技術が開発され、実用化され、普及していく過程においてはいくつものハードルがある。リソースの規模として、私の実感は、 ・基礎的な技術を固め、なんとか利用できそうなものを完成させる開発 1 ・使ってもらって不具合がないように、安全措置などを…

ハイテク自動車盗とMaaS安全対策

昨年の車両盗難件数が公表されて、被害の第一位はランドクルーザー(450件)だという。以下、プリウス(282件)、アルファード(184件)となっていて、この3年間被害上位10車種が、いずれもトヨタ&レクサスなのだという。 車両盗難被害の2位はプリウス、1…

もう一人「古い戦友」からの贈物

昨年、NTTグループのCISOであり、サイバーセキュリティ業界の「戦友」でもある横浜信一氏から贈られた書「サイバーセキュリティ戦記」をご紹介(*1)した。今年になって、もう一人古い「戦友」から「テックラッシュ戦記」という書(*2)をいただいた。NTTグ…

デジタル社会はエネルギー革命を求む

先ごろの<ダボス会議>では、OpenAI社のサム・アルトマンCEOが「AIには原子力(発電)が必要」と発言した。AIの優秀性は知られているが、結果を導き出すにあたっては大量の電力を必要とする。脳の消費エネルギーに対して、現状の技術では数ケタ上のエネルギ…

共同システムのオープン化は朗報だが

私は現役時代、銀行システムに携わっていたことが10余年ある。開発や保守ではなく、どうしたら業務をデジタル化して改善するかという仕事(現在でいうならDX企画)だった。そのため銀行業務の現場を取材したし、当時の「金融Big-Bang」の潮流も勉強した。そ…

TikTokとサブリミナル

中国と(政治的に)距離をとる国で、中国企業バイトダンスのサービス<TikTok>禁止の動きが広まっている。ただ支持率低迷に悩み、秋に大統領選挙を控えるバイデン政権は、若者に多い利用者の反発を恐れて全面禁止の措置には及び腰だともいう。 各国で続く政…

偽情報配信を厳罰に処したい

元旦・2日と大きな事故、事件が起きてしまった。能登沖の大地震では60名程の死者が出、多くの建物が倒壊・炎上した。1,000年の歴史を誇る輪島の朝市など、焼け野原である。加えて、北陸地方救援に向かうはずだった海上保安庁の航空機が、羽田空港滑走路でJA…

銀行業のトランスフォーメーション

「DX with Security」の議論を方々でしているのは、 ・DXで儲ける道筋が見えないと、セキュリティの原資が出てこない ・DXをすれば、自動的にサイバーリスクが増える ・いくらサイバー攻撃が怖いからと言って、DXを控えるのは本末転倒 だからである。今回は…

ロボット・AI導入助成金の適用範囲

結局は赤字国債を増やすことになる、今回の大型補正予算。「COVID-19」対策として安倍内閣のころケタの違う大型補正を組み、国の借金は増える一方である。加えて補正予算は精査が甘く、不要不急のものが交り込んでくる可能性が高い。ほんの氷山の一角だろう…

ちょっとプアボキャな天才

英国が主催した「AI Safety Summit」の記事が、いくつか出てきた。その中で一番面白かったのが、スナク首相とイーロン・マスク氏の対談。<Forbes誌>はその光景をシュールだったと評している。 イーロン・マスクが英首相に語った「AI関連の珍発言」5つ | Fo…

デジタルが嘘をつくとは限らない

これまで何度か、デジタル(&AI)に関してフェイクを流すことがあると注意を喚起してきた(*1)。これまでのメディアとは桁違いの速度で、情報が生成・加工・拡散されてしまい、社会に大きな影響を与えるからだ。その拡散力は、例えば「#増税メガネ」がト…

人間関係とテクノロジー

勧めてくれる人がいて「The Good Life」という本を読んだ。およそ1世紀にわたり、総勢1,300名超の人生をトレースし、膨大なアンケート結果の蓄積を基にした「幸福の科学」である。 ハーバード成人発達研究の成果 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp) 結論は、良い…

ファクトチェックの重要性

いわゆる「フェイクニュース」が続々現れ、デジタルメディアを通じて世界中に拡散してゆく。単なる言葉の「嘘」でも、社会に大きな影響を与えることがあるのに、今はより信じられやすい映像の形で広がっていくのが恐ろしい。 かつてボスニア・ヘルツェゴビナ…

CIOの悩み、ではCISOのは?

あるデジタル系の協会が主催する「デジタルデイズ」というイベントに参加することになった。Web上で1ヵ月に渡り企業のデジタル化(DX)について、各社の事例や課題を共有し、対策を話し合うのがテーマ。私が招かれたのは、最終日の後夜祭とパーティを兼ねた…

NICTのサイバーセキュリティ施策

先週、日経紙の一面に「政府端末に国産サイバー対策ソフトを」との記事が載った。個人用にしても法人(機関)用にしても、サイバーセキュリティソフトウェアやソリューションに、日本オリジンのものは少ない。以前経産省が「国産のセキュリティ産業を育成す…

大災害は必ずやってくる

国交省の関係で、土木工学・地学関係の先生たちと意見交換する機会があった。このところ世界規模で大災害が頻発しているが、この先生たちから見ると「まだ序の口」なのだそうだ。日本社会にとってのリスクとして、 ・東南海沖地震 ・富士山噴火 ・首都圏直下…

自治体等の需要喚起も必要(後編)

ガバメントクラウドの基準を公表してからまだ1年で、成果はないのかもしれない。しかしそれなら途中経過(*1)くらい公表してもいいように思う。約1,700の自治体があり、それらの業務を数え出したら数万になるかもしれないのだから、少しでも早く検討体制に…

自治体等の需要喚起も必要(前編)

先週自民党役員人事と内閣改造があったが、大きな枠組みは変わらなかった。デジタル担当の河野大臣は留任。デジタル行革大臣も兼務することになり、マイナンバー騒動などの収拾に引き続きあたってもらうことになる。ある総務大臣経験者によると「とにかく今…