梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

企業経営

古くて新しい問題「内部不正」

昨年後半から、サイバーセキュリティ業界でも「内部不正対策」の議論が聞かれるようになった。同業他社に転職する際に機密情報/顧客情報を持ち出したという案件もあったし、通信キャリアで派遣社員が長期にわたって1,000万件ほどの顧客情報を持ち出した事件…

今でも「鉄は国家」なのか?

19世紀ドイツの有名な政治家ビスマルクは「国家は血なり、鉄なり」と語り、鉄血宰相と呼ばれた。近代国家(Society3.0:工業化社会)を形成するには、より良質の鉄鋼生産能力増強が必要だった。 日本でも官営八幡製鉄所の開業(1901年)にあたって、初代首相…

これもサプライチェーンリスク

ランキング参加中All About公式ガイドグループ 日頃、中堅・中小企業がサイバー攻撃に逢い事業停止することで、部品納入先の大企業が事業停止に追い込まれる「サプライチェーンリスク」の議論をしている。しかし今回は、サイバー攻撃によるものでもなく、元…

Cyber Initiative Tokyo 2023(第一日)

年末恒例、日経紙主催の「Cyber Initiative Tokyo 2023」。今年も企画をお手伝いし、登壇することになった。2日間の日程で、日経ホールから放映(*1)される。昨年はフィリピン・シンガポール・インドなど英語圏からの接続が増え、徐々に国際色が濃くなった…

銀行業のトランスフォーメーション

「DX with Security」の議論を方々でしているのは、 ・DXで儲ける道筋が見えないと、セキュリティの原資が出てこない ・DXをすれば、自動的にサイバーリスクが増える ・いくらサイバー攻撃が怖いからと言って、DXを控えるのは本末転倒 だからである。今回は…

デジタル窃盗のフォレンジック

デジタルデータの窃盗罪というのは、各国の刑法にも存在していない。デジタルデータは「無形財物」なので、形あるものに関する法律は適用されない。また無体財物の窃盗に関する罪は、電力を盗む以外は法整備されていない。 今回、デジタル法制とフォレンジッ…

「中堅企業」支援の方向性(3/終)

では「中堅企業」と指定されると、何が優遇されるのか?それについては<産業競争力強化法>を改正するということしか、記事からは読み取れない。そもそも大企業の中小企業の違いとは、税法上は「資本金が1億円以下かどうか」である。昨今の「COVID-19」禍…

「中堅企業」支援の方向性(2)

先々週のNHK「日曜討論」で、実業家/著述家の冨山和彦氏が「M&Aで事業が優れた経営者のもとに集まれば、課題の多くは解決する」と発言していた。課題の中には「DX with Security」も含まれているに違いない。以前経済財政諮問会議委員だったデーヴィッド・…

「中堅企業」支援の方向性(1)

私は、100以上の業界団体が加入する業界団体SC3(サプライチェーン・サイバーセキュリティ・コンソーシアム*1)でも仕事をしていて、サプライチェーン上の弱い輪である中小企業のサイバーセキュリティ能力をどう高めてもらうかの議論を数年にわたって続けて…

ハッカー集団「LockBit3.0」の跳梁

このところ、毎日のようにランサムウェア被害の記事が出る。主だったものだけでも、 ・金融サービス会社ION ・ボーイング ・オーストラリアの港湾会社 ・中国工商銀行 が挙げられるが、ほぼすべてでハッカー集団「LockBit3.0」が関与していると思われる。 情…

ロボット・AI導入助成金の適用範囲

結局は赤字国債を増やすことになる、今回の大型補正予算。「COVID-19」対策として安倍内閣のころケタの違う大型補正を組み、国の借金は増える一方である。加えて補正予算は精査が甘く、不要不急のものが交り込んでくる可能性が高い。ほんの氷山の一角だろう…

経営者こそリスキリング

今週のNHK「日曜討論」、テーマは人手不足と賃金UPだった。普通の経済モデルでは人手不足なら賃金が上昇するのだが、今の日本はそうなっていない。その原因は、 ・非正規労働者が増えすぎた ・労働組合が正社員しか守らない ・ブラック企業が少なくない ・多…

失われた30年の主犯

ある政治討論番組で「なぜ日本経済は低迷しているのか?」が議論されるシーンがあった。よくあるテーマだが、議論していくうちに、 ・アメリカの陰謀にやられた ・不良債権処理を誤った ・画一化された教育が良くない などととっちらかってしまうのが常であ…

企業秘密のマネジメント

商社から別の商社に転職した人物が、旧職場から営業秘密を窃取した容疑で逮捕された。容疑は不正競争防止法違反で、退職後も別の従業員のID/パスワードを使って旧職場のシステムにアクセスし、部品や取引先の情報をダウンロードした疑いがもたれている。 双…