梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

国際情勢・市場

生産過剰の解消は難しい

今月に入って、米国のイエレン財務長官、ドイツのショルツ首相が中国入りし、習主席らと会談をしている。中露vs.欧米というイデオロギー対立は、正直大きな問題ではなく各国共足元の経済をどうするかに着目している証拠だ。会談の目的については、中国からの…

大きな枠組みの議論を期待する

先週、日本にセキュリティ・クリアランス(SC)制度を導入する「重要経済情報保護及び活用に関する法律案」が衆議院を通過し、参議院に送られた。この制度に関しては、私も2年ほど研究してきて、 ・機密情報を、例えば重要インフラのサイバー防御に使うため…

民主主義国家ゆえ致し方なし

何度か、中国企業バイトダンスが提供するSNSアプリ<TikTok>の危険性について紹介してきた。公表されないデータも含めて、利用者の情報は習政権に筒抜けになる(*1)と思っておくべきだし、偽情報拡散の道具に使われたり、場合によってはサブリミナル映像を…

国家情報法下のクラウド事業

中国企業は共産党政権からの要請があれば、自社が保有するデジタルデータを提供しなくてはならない。習政権はサイバー空間にも中国の国家主権があると主張し、国家統制を強化する政策を2010年代に次々と打ち出した。そのひとつが、この法律「国家情報法」で…

国連専門機関では、AIの定義を

ガザ地区の状況は、飢餓などは一層深刻になっているが、イスラエル軍の攻撃はやや緩和されているようだ。避難民がひしめき合っているラファ侵攻は行われず、イスラエル軍はガザ南部から撤収しているとも伝えられる。これは明らかに、NGOの<World Central Ki…

ニュース映像をじっと見ている

マグネチュード7.7とは、かなり大きな地震だった。震源地は台湾島東部のすぐ沿岸、花蓮県では12人ほどの犠牲者が出たという。年初の能登半島地震もマグネチュード7.6だったから、ほぼ同じ規模。しかし能登半島地震で245名もの犠牲者が出たのに比べると、人的…

移民大国米国のブランド

昨日、サイバー攻撃による一次被害・二次被害・企業ブランド棄損の連鎖について紹介したが、先月のボルチモア港の衝突&橋崩落事故でも、似たような連鎖があり得ると思った。 事故原因は、電源異常によりコントロールを失った船が橋脚に激突したもの。サイバ…

暗号資産課税の攻防

国レベルの政府・行政機関の役割として重要なのは、社会福祉政策でも産業政策でもない。まずは防衛・外交・収税・通貨である。このうち収税以外の3項目は、直接票につながらないので、政治家には重要視されないという問題がある。ただ税金に関しては、有権…

中国ECサイトのリスク

中国で注目の「全人代」が閉幕したが、経済の低迷を受けてかやや変調らしい。最終日に行われる首相のメディア対応も、今回は行われなかった。市民も生活防衛を進めていて、高級品市場が縮小。大きな売り上げを揚げていた日本の化粧品メーカーも、苦戦してい…

「TikTok」の目に見えるリスク

昨日に続いて、米国の「TikTok」規制のお話。トランプ候補の擁護発言(*1)にもかかわらず、下院では、中国系企業「バイトダンス」に半年以内の売却を命じる規制法案が、352対65の圧倒的多数で可決成立した。まだ上院でどうなるかは分からないが、可決されれ…

他に候補者はいないのですか?

今年は米国の4年に一度の大統領選挙の年だ。通常お祭り騒ぎが年初から、スーパーチューズデーで中間盛り上がりをし、11月の本選挙に向けて広がっていく。しかし、今回は両党とも候補者が決定的になり、当面話題がない。だから人気があるとはいえ、政治家で…

外務省は経済官庁

もう20年以上前のことになるが、ある業界団体の会合に外務省審議官がやってきて時事国際情勢について講演した後の懇談で「産業界のみなさんには知られていないが、実は外務省は(経産省などと同様)経済官庁なのです」と言った。正直驚いて、いろいろ質問し…

「Open WiFi」はやはり危険

サイバー攻撃による情報窃取が頻発していることは周知だが、このところ攻撃側からの情報暴露が目立つ。例えば上海のIT企業「安洵信息有限公司」が、フランスやインドなどにサイバー攻撃を仕掛けたとする内部資料が、インターネット上に流出している。それに…

半導体産業囲い込みの動きか?

先月、半導体ファウンダリ大手のTSMC熊本工場が稼働し始めた。まだ震災から復興途上である熊本県にとっては、地場産業の拡大に向けた朗報である。さらに、第二工場の建設も決まっているという。熊本TSMCだけでなく、このところ関連事業所の新増設が相次いで…

AUKUSへの技術参画

国内では非難の声が高い岸田政権だが、外交・安全保障面では着実に成果を挙げていると思う。今回、インド太平洋安全保障枠組みであるAUKUS(*1)に、限定的な技術参画ではあるものの、日本が連携できる可能性が出てきた。 AUKUS、日本と防衛技術協力を検討 …

台湾総統選挙前後の中国

先週の米国(分断)事情に引き続き、今週は中国の政治・外交に詳しい人に話を聞く機会があった。先月の台湾総統選挙は、中国が種々の方法で介入してくるだろうと思われていたが、結果は総統選は与党民進党が勝ったが、議会選挙では与党は第一党にはなれなか…

デジタル貿易自由化への逆風

私のデジタル技術者としての会社人生、後半は「Global & Digital」を推進する政策活動が中心となった。国ごとに違う規則と、国境が存在しないサイバー空間の矛盾を、少しでも緩和できるよう、各国政府に働きかけたものだ。TPPの電子商取引章に、 ・国境を渡…

半導体関連企業は守らないの?

「もしトラ」の続報である。先週米国事情に詳しい有識者から種々教えてもらい「予測不能なトランプ政権への対処法を考えなくては」という気になった。とにかく自国産業を守り、雇用を守るスタンスだから、今月紹介した日本製鉄のUSスチール買収など論外(*1…

バイデン対トランプ、見通しは五分五分

米国事情に詳しい人に、米国政治状況の現状分析を聞く機会があった。「もしトラ」とか「ほぼトラ」という状況の中で、今後どうなっていくのか、我々はその事態にどう備えるべきかを考える貴重な機会である。 今年の大統領選挙もそうだが、前々回2016年の選挙…

ブレるバイデン大統領の危うさ

「もしトラ」や「いまトラ」という現象に、世界は息を呑んで行方を見守っている。最大の問題はトランプ候補の予測不能性であって、世界秩序や常識の崩壊すら思わせる。そんな候補がなぜ強いのかと考えると、結局現職バイデン大統領が弱いからだということに…

「もしトラ」「いまトラ」の経済政策

「もしもトランプが返り咲いたら」が議論されているが、「いまもうすでにトランプの影響が政策に出てくる」になっているとも伝えられる。その影響とは、例えばウクライナ支援と対移民強硬策を抱き合わせにした予算案にトランプ候補が反対していることから、…

今でも「鉄は国家」なのか?

19世紀ドイツの有名な政治家ビスマルクは「国家は血なり、鉄なり」と語り、鉄血宰相と呼ばれた。近代国家(Society3.0:工業化社会)を形成するには、より良質の鉄鋼生産能力増強が必要だった。 日本でも官営八幡製鉄所の開業(1901年)にあたって、初代首相…

外務省飯倉公館でのパーティ

この日は、麻布台ヒルズの隣にある外務省飯倉公館にやってきた。この週末、一度スピーカーを務めたことのある<日英21世紀委員会>が久々に日本で開催されるのだが、英国委員たちを歓迎する外務省主催のパーティに参加することになったのだ。 中曽根・サッチ…

経済安全保障と農業保護

先週は、欧州で「農家の乱」が頻発した。南フランスから始まった農業従事者のトラクターによる道路封鎖や施設封鎖、酷いのになるとスーパーマーケットに家畜の排せつ物をまき散らしたり、食品輸送トラックを止めて荷物を放り出したりした。全国に広がったデ…

最後の希望が消えようとしている

昨年10月のハマスによる奇襲攻撃に、国連機関UNRWAの職員12名ほどが協力していたとの報道があった。すでに疑惑の領域ではなく、UNRWA自身が9名の容疑者(の犯行)を特定し解雇し、「1名はすでに死亡、残る容疑者を内偵中」と発表している。 UNRWAはガザ地…

2つの「Royal Think-Tank」

ロンドン訪問最終日のこの日、2つのシンクタンクとの会合が予定されている。午前中は、議論に内容の公開について定めたルール(*1)でその名を知られるチャタムハウス。正式名称を、王立(Royal)国際問題研究所という。 ここでは、予期(Anticipation)を…

国家サイバー諮問委員会との会合

この日訪問するのは、急増するサイバー脅威に備えるため、英国政府が2022年から活動させている国家サイバー諮問委員会(National Cyber Advisory Board:NCAB)。民間や第三セクターの有識者たちが集い、政府の活動に資する調査や議論をしている機関だ。日本…

英国国家戦略研究所(IISS)訪問

今週は、経団連の訪英ミッションに同行してロンドンにやってきている。目的は、サイバーセキュリティ関係の日英連携強化。政府機関やシンクタンク、関連企業などを巡って意見交換をする4泊6日の日程である。 この日の主目的は、民間シンクタンク国家戦略研…

世界の10大リスク2024(WEF)

昨日に続いて「世界の10大リスク」。ダボス会議が今週行われたが、WEFもこれを公表していることを関係者に教えてもらった。世界の名だたる経営者が集まる会合だから、軍事関係者ではなくグローバル企業の経営者向けのリスク分析だ。当面2年間と、中期10年間…

世界の10大リスク2024(ユーラシアG)

今年もイアン・ブレマー<ユーラシアグループ>が、世界の10大リスクを公表(*1)した。 1位 米国の分断 2位 瀬戸際の中東 3位 ウクライナの事実上の割譲 4位 AIのガバナンスの欠如 5位 ならず者国家の枢軸 6位 経済回復できない中国 7位 重要鉱物の…