梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

AI

今は100m走に40秒かかるのだが

SF小説は、マイクル・クライトンという作家の登場あたりから、 Science Fiction ⇒ Science Fact に替わってきた。日本語訳だと「空想科学小説から近未来科学小説に替わった」と言ってもいいかもしれない。そしてさらに「近未来」の言葉も消えるかもしれない…

アルゴリズムへの逆風強まる

このところ欧州で、ITシステムに関する批判がいくつか巻き起こっている。典型的なのは、富士通の英国子会社(旧ICL)が納入したポストオフィス向けのシステムで、多くの冤罪被害者が出た事件(*1)。会計システムのバグで、お金の帳尻が合わなくなり横領を疑…

AI課税の対象となるのは・・・

昨日に続いてAI関連の話題。AI活用は、ホワイトカラー層の雇用を奪うとされる。ゴールドマン・サックスのトレーダーが、AI導入で600⇒2名になったのがその典型例。放置すればごく一部のAIを駆使できる人と、その他の人の格差が広がると懸念されている。そこ…

生成AI活用現場のリスク

昨年<Open AI社>の生成AI「Chat-GPT4.0」が登場して、一気にAIブームが巻き起こった。あれから1年近く経ち、そろそろ実際に業務に使われるようになって、いくつかの冷静な知見がたまってきたころだと思う。今回、AIのリスク管理を看板にしているベンチャ…

巨大ITの決算、株価&AI

先週、巨大ITと称せられる5社の2023年10~12月期の決算発表(*1)があった。各社増収、増益で、日経紙は「巨大IT再点火」と見出しを付けていた。改めて、アマゾンの売上高約1,700億ドル(前年同期比14%増)というのはとんでもない値だと思う。年間に直せば…

幼児教育は、言葉をたっぷり

AIの先端研究者のインタビュー番組をいくつか見た。参考になったのは、次のようなフレーズ。 ・Chat-GPTに代表される生成AIの基本は、大規模言語モデルである ・単純に言うと、言語の列を見て、次の言葉(単語)を予測するもの ・それまでのAIは、言語の列(…

新たな宗教戦争の火種

以前、デジタルデータとしてインターネットのそこかしこにある私自身の写真・動画・音声・(このブログのような)言説を集積することで、私の死後も何らかの活動ができる可能性を紹介(*1)したことがある。その後発表された「Chat-GPT」など、大規模言語モ…

世界の10大リスク2024(ユーラシアG)

今年もイアン・ブレマー<ユーラシアグループ>が、世界の10大リスクを公表(*1)した。 1位 米国の分断 2位 瀬戸際の中東 3位 ウクライナの事実上の割譲 4位 AIのガバナンスの欠如 5位 ならず者国家の枢軸 6位 経済回復できない中国 7位 重要鉱物の…

LAWS規制論の最中に・・・

「核兵器よりも人類の脅威になるかも」と考えられ始めたのがAI兵器。特に自律型致死兵器システム(LAWS)の規制については、国連のグテーレス事務総長が今年末までに専門機関を設立し、2026年ころには法的拘束力のある「AI兵器禁止規定」を安保理で取りまと…

ちょっとプアボキャな天才

英国が主催した「AI Safety Summit」の記事が、いくつか出てきた。その中で一番面白かったのが、スナク首相とイーロン・マスク氏の対談。<Forbes誌>はその光景をシュールだったと評している。 イーロン・マスクが英首相に語った「AI関連の珍発言」5つ | Fo…

国際会議「AI Safety Summit」

先週、英国で「AI Safety Summit」が開催された。ウクライナ紛争・中東危機・台湾海峡の緊張などで、グローバリズムは終わったと言う有識者もいるが、国境のないサイバー空間が経済社会に占める比重が飛躍的に増えていて、国境を閉ざすことの意味は小さくな…

ピンクスライムメディアの意味

かつては、家庭に朝刊が配られ、サラリーマンは通勤途上でスポーツ紙を読み、帰宅すれば奥さんが夕刊を広げている・・・そんな日常があった。しかし今では、全国紙の雄だった朝日新聞ですら部数を減らし続けている。市民の多くがネットメディアに拠り、新聞を読…

AIタレントのCM初登場

生成AIの登場は、各方面に大きなインパクトを与えた。 ・いよいよAIが人間を超える ・人間の職場がAIに奪われる ・AIを使えるか否かで、人の価値が二極化する といった言説が、紙メディアにもデジタルメディアにも散見されるようになった。かつて、米国の有…

米国の「AI兵器規制」案

拒否権を持つ常任理事国であるロシアが、自ら紛争当事国になったことで、より一層無力感が深まっているのが国連の安全保障理事会。しかし国際紛争の解決に向けた、全世界的な活動機関としてはここしかなく、無駄とは分かっても議論を続けなくてはいけないの…

AI学習利用規制(北風vs.太陽)

Web上の記事や画像は、特に制限しない限りは、何人が参照しても構わない。いわば人類の共有財産だ。もちろん、版権元に断りなく剽窃したり変造したりすれば、著作権法などに違反することになる。生成AIが、これらのデータを学習して成長することは、必然の流…

日本政府のAI運用指針案

生成AIの登場は多くの人達にインパクトを与えたので、各国政府が(AI全体についての)規制を検討し始めた。G7各国は「広島AIプロセス」で信頼できるAIを求めていくことでは同意したものの、日米はソフトロー指向、欧州はハードロー指向が鮮明になっていた。 …

国連安保理でのAI規制論

先週、国連安保理で初めてAIに関する議論が行われた。ウクライナ紛争や北朝鮮のICBM問題など、常任理事国ロシアの拒否権があって、実効ある措置が採れない会合である。しかし軍事の世界において、 ★戦略級:OSINT、SIGINTなどのデジタル情報なしに戦略策定は…

AI規制はまずソフトローから

サイバー空間での動きは眼に見えない。その上サイバー空間には国境がなく、国内法が適用される保証もないし、そもそも「有体物法」ではデータの窃盗などは罪に問えない。加えて技術の進歩や、適用分野やシーン(*1)の広がりが極めて速い。法規制を検討しよ…

映画界を生成AIが揺さぶっている

今週「Mission Impossible」最新作のプロモーションで来日するはずだった、トム・クルーズはやってこなかった。米国俳優労組がストライキに入ったからで、広報・宣伝活動もできなくなったからだ。ストライキの規模は43年振り、脚本家も同時にストライキを打…

情報工学と文学

私が工学部の情報工学科に入学したのは、1974年のこと。クラスは44名が在籍していて、あれから50年にもなろうというのに何人かで集まることができるのは望外である。何人かは鬼籍に入ったが、比較的早い時期に2/3ほどのメンバーのメルアドが共有できていたの…

「AIの定義」を今こそ(3/終)

2年前から「AIの定義」を求めていたのに、なぜ今取り上げるのかというと、AIの利用分野が当時よりずっと広くなってきているから。例えば医療業界では、 医療現場でAIが「やっていいこと」と「やってはいけないこと」…AIによる医療事故の責任の所在(奥 真也…

「AIの定義」を今こそ(2)

「AIの定義」を考えなくてはと、私が思ったのは2020年ごろ。国内の話ではなく、やはり欧州委員会との議論の場でだった。 欧州が示したAIの定義 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com) で紹介したように、通常システムまで全部を包含するような定義を主張…

「AIの定義」をいまこそ(1)

「生成AI」が華々しく登場し、普通にWebブラウザでも使えるようになって、様々な分野での活用やそれと並行した危惧が伝えられている。最近購読を始めた<MIT Technology Review>でも、人気記事の上位はAI関連が常に占めている。 今でこそ、研究機関や企業は…

これもAIの悪用事例

最近はまだ十分明るい夕方19時前、NHKニュースを見ようとTVのスイッチを入れる。ちょっと早いと<ニュース7>の前の<首都圏ネットワーク>をやっている。そう18:52くらいだろうか「私たちはだまされない」というコーナーがある。オレオレ詐欺対策のコーナ…

欧州議会の「AI Act」

今月、欧州議会が「AI法」の承認に関する投票を行った結果、圧倒的多数で可決された。世界に先駆けたAI規制を本格的に議論するスタートラインに、EUは立ったことになる。日本のように議会で議決すれば法律が決まるというわけではないのが、この国の立法の難…

利用技術/産業こそが重要

生成AIのブームにあたり、各国の開発競争も激しくなっている。G7広島サミットではAIを巡るルール作りをすることを定めた「広島AIプロセス」が公表されている。AIの健全な発展に向けて、悪用を防止しながら技術開発/利用をすすめようということだ。一部の識…

「広島AIプロセス」を歓迎

広島G7サミットが閉幕し、ウクライナへの支援やロシアへの非難、中国を念頭にした経済威圧への対応、金融不安の払しょくなどが議論・決議されている。その中に「信頼できるAI」を求めて、広島AIプロセスを進めるという項目があった。 飛躍的な発展を続ける生…

プラスAI人材のススメ

このところ、生成AIに関する話題が尽きない。「リスクはあるけど、まずは使ってみよう」と言うのが正しい姿勢。もちろん、機密情報を入力させないとか、悪事に利用しないというガバナンスは必要だ。 ブームが起きると、必ず人材不足~争奪戦のようなことが起…

生成AIの人月商売への影響

「ChatGPT」を始めとする生成AIの得意分野の一つがプログラミング。自分の書いたコード(プログラム)を登録すると自分のプログラマとしての評価が得られるサービス「GitHub」などもあって、インターネット空間に蓄積されたコードの量は測り知れない。それら…