梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

サイバー文明研究センター5周年

 昨日は、久しぶりに慶應三田キャンパスに出かけた。ここには「サイバー文明研究センター」という組織があり、僕も発足時から議論に参加している。「インターネットの祖父」と呼ばれるDavid Farber教授が初代センター長で、現在は「インターネットの父」とあだ名される村井純教授がセンター長である。センター発足に尽力したのが國領二郎教授、今回はセンター発足5周年の記念イベントがあるのだ。

 

 インターネット(≒サイバー空間)は、現実世界に極めて大きな影響を持つようになってきた。サイバー空間に無縁な個人も企業も、意識しているかどうかは別にしてほとんど存在しない。スマホをもてばもちろん、ちょっとした家電品でもネット接続は当たり前で、シンプルなAI機能を内在している場合もある。

 

    

 

 だからインターネットは「文明」の域まで来ているというのが、このセンターの名称由来。便利になるのはいいことだが、文明には必ず陰の部分がある。このセンターでは "Cyber Civilization" の光と影を研究しているわけだ。

 

 セッションは3教授の「この5年間の振り返り」に始まり、ThreatSTOP Inc.のMockapetris氏の基調講演が続いた、曰く「1968年にMITがDNS(*1)構想を、1973年には分散システムを発表。今やデジタル政策は国際情勢にもからみ、新たなビジネルリスクを産む」。あまりにも変化のスピードが速いので、企業も体制整備を迫られるという。例えばコンプライアンス対応も、デジタル化&自動化するべきだというわけ。

 

 

 午後は将来の(サイバー文明)研究展望をテーマに3つのセッション、

 

・DATA Sharing AIなどの新技術も社会変革(DX)もデータ次第、どう活用するか

・Future of Press SNSなどでニュースを知る人が増える中、新聞などはどうなるか

・Cyber Conflict ハイブリッド戦が当たり前になった世界で、国際紛争はどうなるか

 

 が展開された。40年前は「計算が早くできる道具」だったデジタル機器、国家戦略を左右するところまで来ていて、ここでは「文明」としての成熟に向けた議論が行われているのだ。

 

*1:Domain Name System