広島G7サミットが閉幕し、ウクライナへの支援やロシアへの非難、中国を念頭にした経済威圧への対応、金融不安の払しょくなどが議論・決議されている。その中に「信頼できるAI」を求めて、広島AIプロセスを進めるという項目があった。
飛躍的な発展を続ける生成AIに代表される技術に対し、何らかのルール作りは必要との見方で各国が一致した結果である。日経紙によれば、
◆各国が共通して重視する点
・民主主義的価値の保護 国民の監視や差別につながるAI利用を防止、誤情報拡散も防ぐ。
・安全保障などリスクへの対処 サイバー攻撃への防御や、情報漏洩の回避。オンライン詐欺への悪用防止。
◇考えが異なる点
・ルールなどの在り方 欧州各国は加盟国共通の新法を策定へ。日米は現行法の活用が前提。
となっている。より技術に詳しい民間の意見を容れてソフトロー中心のルール作りを求める日米と、政府主導のハードロー整備を急ぐ欧州の意見が分かれた形だ。この点を年末までに調整しようというのが「広島AIプロセス」とのことなので、この議論を歓迎しつつ注視したい。
欧州は、法律に基づく審査を経て承認を得られたAIにのみ、欧州域内での流通を認める意向だ。私としては、この「承認」プロセスがどうなるのかを憂慮する。というのは、AIは日々成長していくものだからだ。ある時点で承認したとしても、その状態は翌日には変化している可能性が高い。移ろい変るものを継続的に承認することなど現実的ではないし、仮に出来るとすれば自動化手法(つまりAI応用)に拠るしかないだろう。
岸田総理の地元「広島」の名が付いた国際調整プロセスでもあり、日本政府にはまず国内の民間技術者・事業者・有識者の意見を十分に聴いてもらいたい。そして過度な規制に走りがちな国をリードして、サイバー空間の「地政学的分断」を起こさないような結論を出していただきたい。