先週「Google・ゴンザレス裁判」として知られる訴訟が、米国最高裁で結審した。私も含めて、デジタル政策の関係者はほっと胸をなでおろしている。この裁判は、
・2015年、ISISがパリでテロを起こし130人ほどが犠牲になった
・ISISはYouTubeを利用してテロを企画していて、YouTubeにも責任論が出た
・犠牲者の米国人ノヘミ・ゴンザレス氏の家族は、YouTube運営者(Google)を訴えた
というもの。最高裁は、GoogleがISISのコンテンツを十分取り締まらなかったゆえの「幇助」にあたるかどうかに関し、幇助には当たらないとして原告の訴えを退けた。争点となったのが「通信品位法第230条」で、
・プロバイダーはユーザーの発信する情報に原則として責任を負わない
とある。ただこの裁判では原告側は、
・YouTubeには「おすすめ」を表示するアルゴリズムがあり、ISISコンテンツが拡散された
・このアルゴリズムは純粋なユーザ発信情報ではなく、運営者にも幇助や教唆の罪がある
と主張していた。結果として米国法曹界は、このようなアルゴリズムも「第230条」の免責対象だと認めたことになる。2015年の時点では、電子フロンティア財団が「インターネットは最高裁判所による検閲を回避した」と評したように、インターネットは守られた。
問題はこれから、である。この事件からはすでに8年経ち、インターネット経済の複雑性はケタ違いに増している。プロバイダーと呼ばれる事業者が重層的になって、ユーザからは直接見えない事業者も多い。また、アルゴリズムなどという単純なものではなく、ディープラーニングによる対応の変化をインターネットは手に入れている。今、どうような裁判が起きたらどうなるか、予断を許せる状況ではない。
最高裁の結審まで8年なら、日本では早いスケジュール。それでもデジタル経済では長すぎる時代感覚だ。デジタル経済における紛争解決や法整備は、政府・法曹界に与えられた大きな課題である。