先週に引き続き、デジタル裁判の結果をもうひとつ。今度は国内の結果である。動画配信サービス「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが、動画にコメントを流す特許を侵害されたとして米国FC2らを相手取って起こした控訴審が、一審判断を覆してドワンゴ勝訴となった。
ニコ動の特許訴訟、米FC2などに配信差し止めと賠償命令…ドワンゴが逆転勝訴 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
FC2らはドワンゴの特許は使用していたのだが、日本への配信サービスは国外からのサーバによるもので、特許権の「属地性」から特許侵害にはあたらないとしていた。一審も「FC2らのサービスは国内で完結していない」として、ドワンゴの訴えを退けていた。
各国の法律は、一般的にその国の治世が及ぶ範囲で適用される。国境を越えれば、その土地の法律に従うのが普通。サイバー空間に国境を設定できないことから、行政機関も産業界も、法律を域外適用したいと思うことはよくある。
海外企業でも、国内に拠点を置き国内にサービス用のサーバ等を置いているなら、国内法は適用できる。一方拠点も置かず、サーバ等も日本国外に置いているなら、現行法の適用には疑義が生じる。ではその国へのサービスのためには、その国にサーバ等を置けと言いたくなる。これを「サーバローカライゼーション規制」という。
しかし産業界としては、この規制は望ましくない。だから日米の産業界は10年以上前に「サーバローカライゼーション規制の禁止」を唱え、TPP等の規定に盛り込んでもらった。理由は2つある。サーバ(データセンター)の位置としては
1)経済合理性の優れたところ
電力・通信インフラの充実、保守・運用のしやすさ、気象環境
2)地政学的リスクの少ないところ
強権的な政府や不安定な政権、紛争等のリスク
を満たして欲しいのだ。例えば、クーデターで政権を獲った軍部がサーバを接収し、これまで軍部に批判的なSNSを発信していた人たちを大量に拘束する・・・という事態を避けるには、当該国にサーバはない方がサービス事業者としても安心できる。
だからサーバローカライゼーションは禁止したいが、それ(海外からのサービス)が治外法権になっても困る。それゆえ国内法の域外適用の議論になる。今回の裁判、FC2は上告するようで結審はまだだが、行方は見守りたい。