今国会では「重要経済安全保障情報の保護・活用法案」が衆議院を通過し、いわゆるセキュリティ・クリアランス制度が日本でも実現しようとしている。米国のグローバルパートナーになり、英国とも緊密なインテリジェンス情報共有体制が構築できそうな外交状況にあるのだが、その重要情報が日本国内から漏れ出すようなことがあってはならない。
公務員は「特定秘密保護法」で罰則付きで情報管理を義務付けられているが、例えば重要インフラ企業のCISO等は、自企業ひいては日本社会を守るために役立つ情報を知ることができない。これを解消しようと上記法案が制定に向け、議論されている。ただ、グローバルパートナーになったから情報が入ってくるとは限らない。
この種のことは「Give & Take」が基本。日本政府も、英米等に役立つ情報を自前で収集できることが重要だ。そこで情報の保護・活用と並んで収集をどうするか、これが「Active Cyber Defense」の要諦である。
政治空白が影を落とす - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)
で述べたように、この両面(保護・活用と収集)の法整備が必要だった。一方はメドが付きそうだが、もう一方はどうか?
サイバー防御法案、今国会見送りへ 「通信の秘密」議論進まず:時事ドットコム (jiji.com)
にあるように、どうも暗礁に乗り上げているようだ。「憲法21条:通信の秘密」に関する議論が進んでいないからだと、この記事は言う。内閣法制局が動いていないとも読めそうな記事だが、本件の本質は政府の信用度にある。
政府に信用が十分あれば解釈改憲して「不正アクセス禁止法」など周辺法制の改正も可能だが、現時点の支持率では官僚組織も動くに動けないのが本音だろう。官僚組織は、見るとはなしに市民の感触を探っている。
ただ本件は、日本がこれからの国際社会で生き残れるかどうかに直結する重要案件。「保護・活用」だけでなく「収集」にも道を拓かないと危ないと思われる。政権は口で「丁寧な説明」と言うだけでなく、ハラを据えて真摯な議論をしてほしいものだ。