「COVID-19」禍の前から、米国などのテック企業ではテレワークが盛んだった。一部企業では「やっぱり週3日は出社せよ」などと揺り戻しているが、例えばサンフランシスコのビジネス街に通えるエリアの住居費が高騰していて、テレワークでないと勤務できないという従業員も少なくない。企業としては、住居費補助をするくらいならテレワークでと考えるのも致し方ないだろう。
しかし出社しない勤務形態だと、正直どんな人が就労しているかわからない。成果主義の米国企業であれば、例えばAIのサポートを得て3人分の就労をしてその報酬を受け取ることも可能なのではないかと思った。
すると案の定、身分を偽って就労し多額の報酬を(違法に)得ていたとの事件が発覚した。しかもその報酬は、ひょっとすると米国に届く弾道ミサイルの開発に使われていたかもしれないのだ。
米、北朝鮮IT技術者の情報に500万ドルの懸賞金 身元偽り米企業で勤務 | ロイター (reuters.com)
懸賞金が掛かったのは3人の技術者だが、その背後には多くの技術ワーカーがいたと思われる。違法に得た報酬の総額は、日本円にして10億円以上になるという。また、これをほう助したとして米国籍の女が訴追された(*1)。国外にいるこれらワーカーを、国内にいるように見せかけた容疑が掛かっている。
この事件の動機はもちろん北朝鮮の外貨稼ぎなのだが、米国テック企業側にも原因がある。数学等に長けた移民(&移民の子供)がIT技術者として支えてくれなくては、テック企業は成長どころか維持もできない。慢性的な人手不足なのだ。経営者は次々と新企画を打ち出し、投資家からの資金集めに忙しい。R&Dの現場には、経営層からの督促ばかりが落ちてくる。
そんな状態だから、十分な身元確認もしないまま就労させている実態が浮かび上がってきたわけだ。日本でもIT技術者は不足気味、でも本当に足りないのはテック現場も経営も見ることのできる「中間管理職」。死語となったこの言葉、もう一度かみしめる必要があるかもしれない。
*1:北朝鮮などの技術者が米国在住を装ってテレワークを支援か 米国人、勤務ほう助で訴追 - 産経ニュース (sankei.com)