戦争というものは膨大な資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を喰う。地球のあちこちで紛争が起きたり緊張が高まったりしているから、各国の軍事費が増えるのは当然のこと。2023年の世界中の軍事費は、過去最高の2.4兆ドルに上った(*1)という。
その(軍事リソースの)需要が増えているなら、供給も増えていることになる。高価な車両、船舶、航空機、さらにはそれらの部品や燃料、兵士の糧食など、軍事関連企業の株価は上がるわけだ。
もうひとつ懸念されているのは、核兵器を含む大量破壊兵器が使われないかということ。さらにより強力で危険な兵器が開発されないかということである。後者の代表格がAI兵器、中でも自律的な殺傷兵器(LAWS)の登場である。
軍事市場の拡大と新兵器の開発、この2つが揃えば当然出てくると思われているのが「AI兵器産業」。その一端が記事になっている。
軍事向けAIユニコーンの独Helsing、評価額6270億円で大型資金調達 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
この企業<Helsing>は、欧州各国に軍事リソースを提供するAIユニコーンだが、秘密主義で知られその実態がよくわからない。ただ企業の将来性は高いと見たマネーは、どんどん集まってくる状況だ。カネに倫理はない、典型的な例である。
国連は2026年をめどに実効性のある「AI兵器禁止規定」を設けたいと、専門機関の設置を決めている(*2)が、私自身はそのような規制ができるかについて懐疑的だ。仮に国連で文言上の決議はできたとしても、このような秘密主義の企業にどう適用するのか?当然需要側である各国軍隊も「安全保障上の機密」として、当該企業から何を買っているのか公開はすまい。
AIベンチャーの創業者は、AIの定義にこだわる私に「いずれ全部がAI(利用)になりますから、気にしていません」と言った。つまりすべての軍事システムも、AIになるのだ。それと合わせて、やはりAI兵器禁止は難しいと言わざるを得ない。