梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

みんなのお財布を守る警察活動

 先日、警察庁サイバー警察局の「SIMスワップ対策」とその効果を紹介(*1)したのだが、その話をしてくれた警察庁の人が、この本を送ってくれた。かのエピソードを含め、警察庁が尽力している「デジタル時代にみんなのお財布を守る活動」の紹介冊子である。

 

 現金主義の日本でも、ついにキャッシュレス決済額が1/3を超えた。2022年には、

 

クレカ 93.8兆円(30.4%)

コード決済 7.9兆円(2.6%)

電子マネー 6.1兆円(2.0%)

デビット 3.2兆円(1.0%)

 

 となって、コード決済が急伸している。キャッシュレス決済を狙う犯罪も増えていて、クレカの不正利用が5年間で倍増した。特殊詐欺被害額はこのところ下落傾向だったのだが、2022年には増加に転じた。その主要因はクレカの番号盗用が増えたことによる。

 

        

 

 また、インターネットバンキングに係る不正送金が、2023年に激増。前年から件数は5倍になり、被害総額は90億円近くになった。種々の個人情報(*2)がフィッシングなどで漏洩し、闇サイトで取引されて悪用されているわけだ。これに対して、関係機関と連携して、

 

1)送信ドメイン認証技術(例:DMARK)

2)ウイルス対策ソフト等による警告

3)次世代認証技術(例:パスキー)

 

 などを促進しているとある。犯罪は国境を越えて行われるのが普通になったので、サイバー局では国際連携も主任務の一つ。外国の捜査機関からは、警視庁サイバー局が日本のワンストップ窓口である。

 

 加えて、フィッシングサイトを先制的に把握し、必要に応じてテイクダウン(閉鎖)もする(*3)。その判定には生成AIも利用して、高度化・高速化を図っている。クレカ番号の悪用についても、闇サイトのパトロールを強化して対処しているという。

 

 デジタル犯罪が高度化する一方、捜査機関もデジタル化して対応している状況が、よくまとまった小冊子だった。知り合いも多く加わっている「キャッシュレス社会の安全・安心の確保に向けた検討会」については、その努力に敬意を表したい。

 

*1:SIMスワップ対策は本人確認強化で - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

*2:ECサイト等のID、パスワード、クレカ番号、口座番号等

*3:積極的サイバー防御(ACD)の先行例