先週、ホリディシーズンが始まった各国で、航空機が飛ばない事態が発生した。特にひどかったのが米国で、ビジュアル化されたフライト情報から1機、また1機と消えていき、ついに飛行中の機影がなくなってしまった。9・11以来の事態だが、ハイジャックした飛行機を都心に突っ込ませなくても、似たようなことができることを社会に示した。
情報BOX:世界的システム障害、事象と要因 IT企業クラウドストライクとは | ロイター (reuters.com)
交通機関以外にも、外食チェーンで決済ができなくなったり、ATMが使えなくなったり市民生活に直結する不具合が出ている。一般企業のオフィスでも、個々人のPCが突然ブルースクリーンになって、Windowsが再起動を繰り返し始めた。キーボードの前の人には、全く打つ手がない。
原因はMicrosoftのWindows上に搭載されていた、セキュリティソフトウェア。更新手順を誤ったようで、Windowsが再起動しても更新されていないので、再び再起動に入る(*1)ことになった。
このソフトウェアのシェアが高かったことから、世界同時多発的な大事件になった。ビッグテック企業といえば、GAFAMの名前がすぐに挙がるが、実は隠れた寡占デジタル企業はいくつもある。以前、コンテンツ配信ネットワーク大手3社のひとつで障害が起き、やはり広範囲な影響があった。インターネット経済は水平分業(*2)、いろいろな専門ソフトウェアやサービスが複雑に絡み合った構造になっている。局地的な寡占化も進んでいて、ある企業が不具合を起こすと影響は世界中に広がってしまう。
仮に企業規模は大きくなくても、高シェアの企業は「デジタルインフラ」である。ベンチャー時代の経営管理手法では、社会に対する責務を果たせない。技術を売りにシェア獲得に邁進するのとは、全く違う経営手腕も要求されるということである。
*1:更新が完成していない状態で放置するのは危険なので、このようなループに入ってしまう