梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

グローバル企業の経営者として

 トヨタ自動車豊田章男会長の発言が、波紋を広げている。長野県の法要会合に出席した時、記者団に対して、

 

・日本から出ていけば大変なことになる

・ジャパンラブの私が思うのだから、本当に危ない

自動車産業が世界で競争していることに、感謝しているはず

 

 などと発言した。朝日新聞が都合のいいところだけを切り取ったとする説もあるが、仮にそうだとしても日本の大手企業の経営者が口にしていい言葉ではない。発言内容への非難(*1)が相次いだのは当然といえる。

 

排ガス等規制の厳しいイタリアの街角

 確かに自動車産業は揺れている。EVシフトの波はやや減衰したものの、長期的には内燃機関産業は衰退するし、トヨタ自身も含めて排ガス規制不正などの不祥事が相次いでいる。

 

トヨタ会長、海外移転→日本脱出を示唆…国交省からのイジメ的行為に失望 | ビジネスジャーナル (biz-journal.jp)

 

 しかし、だからといって「自動車産業がいじめに遭っている」との認識だとすると、経営者としての資質を疑ってしまう。今年の株主総会でも、トヨタ会長の取締役再任賛成は72%ほどと暴落した。個人的には、この件についての不満もあったのかもしれないが・・・。

 

 トヨタが真のグローバル企業になるためには、

 

・市場は全ての国や地域で、特定の国や地域に(拠点も)縛られない

・そのために、ヒト・モノ・カネ・情報の自由な流通を求める

・国ごとの規制の差異については、この是正を求める

 

 スタンスに替わるべきなのだ。「日本脱出」「ジャパンラブの私」などと口にする時点で、すでにその資格はない。トヨタは製造業ではなく「Mobility Company」になると聞いている。ゴビ砂漠でも、スイスアルプスでも、マンハッタンの中心地でも(*2)等しく移動したい人に最適なサービスを提供するという意味だ。

 

 今回の豊田会長の舌禍事件は、同社が目標とは異なり地域(ムラ社会)に根差した従来型の製造業から脱皮できていないことを示している。株主総会で豊田氏再任に反対するよう求めた議決権行使助言会社グライルイスの真意も、彼のグローバル企業経営者の資質を問題視したのかもしれない。 

 

*1:逆切ギレは滑稽、とっとと出ていけ、などのネット民の声

*2:できれば「ガザでも、クレムリン前でも」