私の所属するシンクタンクは「DX with Security」を中心に、デジタル政策を論じている。何度か申し上げているように、デジタル政策は行政からの押し付けではうまくいかない。官民が平等の立場で議論し、方向を定めていく必要がある。そこで<覆面座談会>ではないが、両者が本音で話し合える場をできるだけ多く持とうとしている。今回も、そんな場で面白い議論があった。テーマは仮想通貨。
今年になってから、とみにランサムウェア被害が多く報道されるようになった。身代金を払う/払わないの法的議論も盛んだが、いざ払うとなると最も多く要求されるのが仮想通貨。行政サイドからは、
・身代金は払わないで欲しい
・マネーロンダリングにも使われるので、仮想通貨は利用しないで欲しい
との要望がある。
「通貨の安定」は国家主権のひとつ(*1)だが、仮想通貨は国の補償もなければ制約も受けない(ある意味)自由なカネ。何かあっても、泣きつけるところはない自己責任通貨である。民間としては、政府の縛りがないので、使いやすい面はある。しかも世界中カネ余りなので、流れ込む先としては多少怪しげでも魅力もある(*2)。
行政としては、強盗事件として有名な「三億円事件」の2~3ケタ多いカネが窃取されても民間(&メディア)の関心が薄く、忸怩たる思いがあるようだ。これに対して激しい意見が民間からも出た。
「仮想通貨の全廃、禁止ができないのか。今の状態では犯罪のためにある通貨のようなものだ」
行政側がどう応じたかは、ここでは伏せるが、代わりに私の意見を述べておく。
・通貨とは信用、信用が無くなれば自然に消えていく
・政府保証などない(*3)ので「価値がある」と思っている人がいる限り無くならない
・仮に今ある仮想通貨を国際条約等で禁止したとしても「闇Web」などで生き残る
*1:国家主権を失うとは、こういうことか! - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)
*2:2年経っても状況に大差なし - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
*3:極論ではドル札だって紙切れ、ニクソンショック以降金地金に替えてくれない