梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

ピークの時、影が差し始める

 全国共通交通系ICカードを、持っていない人は少ないと思う。知らない街に行って、初めての公共交通を利用するときも、大いに役立つ。数年前だが、沖縄の<ゆいレール>で使えた時にはほっとした。利用も順調に伸びていて、先月は全国での利用回数が初めて3億回を超えた(*1)という。

 

 ひょっとするとこのあたりがピークかなとも思えていて、気になる記事がちらほらある。まず、システム更新費用が高いとして、利用されているにもかかわらず熊本のバス事業者がこのカード利用をやめたこと(*2)。そして、内蔵しているFelica対応のチップ供給不足で、新規Suicaの発行が1年ほども止まっていること(*3)だ。

 

トリノ路面電車

 思えば、Felica仕様のICカードと自動改札機、これらを管理するデータセンターのアーキテクチャが完成してから30年近く経つ。最先端でローコストだったはずのシステムが、よりローコストなものに脅かされているということだろう。例えば昨年出張したオーストラリアなど、日本より遅れて自動改札機を導入した各国は、クレカのタッチ決済を採用している。

 

 JR各社が「次」をにらんで検討・実証し始めているのが、<QRコード乗車券>。すでに自動改札機に読み取り機が設置されているのを、ご覧になった方も多いだろう。ICカードといまでも併用している磁気切符を、まずQRコードに置き換え、Felica対応カードと併用する、そしてその次は・・・という考えだと思う。

 

 日本人の生活に不可欠になった全国共通交通ICカードも、今がそのピーク。そんなことを感じさせてくれる昨今の報道だった。

 

*1:交通系ICカード、7月の利用回数が初の3億件超え - Impress Watch

*2:次世代の「切符」はどうなる? - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

*3:〈ビジネスTODAY〉Suica販売停止1年 「日本仕様」の壁 専用半導体、生産1社 訪日客需要に対応できず - 日本経済新聞 (nikkei.com)