梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

大統領選挙での暗号資産規制論

 11月の米国大統領選挙。トランプ前大統領が狙撃されながらこぶしを挙げたシーンで「決まった」と思ったのだが、バイデン撤退から潮目が変わり今は混とんとしている。本来政策論争が聞きたいのだが、トランプ候補はあの通りだし、ハリス候補も戦略的に政策をあいまい化している。例えばエネルギー政策については、環境配慮もしながら石油業界を切り捨てるような発言はしていない。

 

 本来労働者の味方と言っていたトランプ候補だが、自動車関連労働組合はハリス支持のようだ。業界団体の取り込みは、いずれの陣営にとっても非常に重要。ここでこれまであまり選挙の争点になってこなかった業界が、注目され始めている。それは暗号資産(仮想通貨)業界。

 

    

 

 先週別ブログで紹介したように、トランプ候補が暗号資産を活用して政府債務(35兆ドル)を返済するという仰天プランをぶち上げた(*1)。しかし業界はハリス支持に回るとも伝えられる。条件は、暗号資産にかけられている(&今後かけられそうな)規制の緩和(*2)。

 

 多くのデジタル産業を含めて、この業界や金融業界を除けば暗号資産の益は少なく、身代金やマネロンに利用されるなど害が目立つ(*3)。すでに「倫理のかけらもないカネ」になってしまった暗号資産については、バイデン政権は規制を強化している。証券取引委員会(SEC)が証券取引法違反容疑で複数の訴訟を起こしているほか、先物取引委員会(CFTC)もコモデティ扱いで規制(*4)している。

 

 暗号資産の使用権原主体が(分散技術で)見えないならば、これは石油先物などと同じコモデティだという理屈だ。業界団体は、このようなバイデン政権のスタンスを改めてほしいと思っている。同じ主張は、バイデンのやってきたことは全部NGというトランプ候補も主張しているのだが、業界は彼の不確実性を嫌ったようだ。

 

 規制の是非はともかく、デジタル関連業界の規制が大統領選挙の争点になるのはいいことだ。両候補は、できるだけあいまいにせず業界と市民に政策を説明してほしい。

 

*1:上には上の政府債務 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

*2:暗号資産業界、ハリス氏支持へ結束 政策見直し求める | ロイター (reuters.com)

*3:仮想通貨を駆逐せよ! - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

*4:米下院、SECの仮想通貨規制役割明確化の「FIT21法案」を採決へ (coinpost.jp)