梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

政治とSNS、過去・現在・未来

 膨大な利用者をもつSNSは、もはや巨大メディアである。しかも編集者がいないか、編集はめったに行われないものなので、偏った情報や全く嘘のものでも流れてくる。そこで、運営事業者にコンテンツの管理を求める「コンテンツモデレーション」という考え方(*1)が出てきた。いくつものSNSが、その方向で緩やかな管理を始めている。そんな中、政治とSNSについて、先週いくつか注目すべき報道があった。

 

 まず、過去のこと。先週トランプ前大統領が出版した書籍では、2020年の大統領選挙においてFacebookに対し、バイデン大統領の疑惑を隠ぺいしたとしてザッカーバーグCEOを監視し「終身刑にするぞ」と脅したと自慢している。自らTwitterで嘘をばらまきながら・・・である。

 

パリのミニスーパー「フランプリ」

 続いて現在。先月TelegramのCEOパヴェル・ドゥロフが、フランスで逮捕された。日本ではあまり知られていないが、このSNSは一定期間でメッセージが消えるなど匿名性が高く、マネーロンダリングや麻薬取引、児童ポルノなど違法な活用が多いとされている。これらの違法な情報を、故意に見過ごしてきたゆえの逮捕ではないかと伝えられる。Telegram同様コンテンツ管理の甘いイーロン・マスク氏のXも、ブラジルで閉鎖されるようだ。

 

 では未来はどうなるのか?デジタル政策研究者としての理想を言うなら、

 

1)過度なモデレーションを必要としない、投稿者の節度

2)偽情報に惑わされない、利用者のリテラシー

3)各国政府から中立である、運営事業者のスタンス

 

 があって、よからぬ政府・業界・団体等が悪事に使いにくい自律性を持てることだ。少なくとも(私を含めて)ホワイトなインターネット利用者は、この3点を肝に銘じたい。しかし、現実には難しいとするなら、やはり規制ということになる。犯罪を取り締まり、煽動したり不安をまき散らす行為については「管理」する。それも国際協調の中で。政治とSNSについて、各国政府の透明性ある議論を期待したい。

 

*1:コンテンツモデレーション(前編) - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)