何度か「複雑に絡み合ったサプライチェーンがあり、米中デカップリングなど不可能」と申し上げてきた。しかしいくつかの分野で、それは少しずつだが進行している。ヒト・モノ・カネ・情報について、
・ヒト 欧州からのフライトが減るなど、少しだけ減っている
・モノ 中国からの輸出は増えているが、各国関税引き上げなどで対応
・カネ 投資家の中国・香港市場からの引き揚げや、対中投資の減少が起きている
・情報 もともと「Great Fire Wall」がある上に、情報を持った人の移動が減っている
という概況だ。特に最後の「情報を持った人の移動」については、IBM・Microsoft・GMらが在中国の研究開発拠点を閉鎖したり縮小したりしている(*1)。また、米国には知的財産の中国への流出を防ぐための「チャイナ・イニシャティブ」という試みがトランプ政権で発動され、現在は停止しているものの余波が残っている。
その例として、当局の調査を受けたノースウェスタン大学医学部の元教授であるウー博士が自殺したこと(*2)が挙げられる。「チャイナ・イニシャティブ」では、過去6年間に250人もの研究者が摘発され、112人が職を失っている。このような動きは、公式にこのプログラムがバイデン政権で停止されていても、止まることはなさそうだ。
もう一つ、気になる記事があった。経済安全保障がらみで、日本でも研究者の職歴等を公開するよう、政府が検討している(*3)というもの。大学に資金援助する際の条件にしたいようで、今後議論を呼びそうだ。
研究の自由や大学の独立性などと、経済安全保障のバランス。これも特定の(色のついた)人だけで議論するのではなく、それ自身「透明性」をもって進めてほしいと思う。
*1:IBMやGMが中国事業縮小 アメリカの対中投資、前年比4割減 - 日本経済新聞 (nikkei.com)