最終盤を迎えた、自民党総裁選挙。候補者が多い分数多くの政策が論じられるのはいいことだが、どうしても焦点が絞れず散漫になる恨みも残る。その中である候補者が「解雇規制の見直し」に言及して、論議を呼んでいる。「副業を認める社会」という主張もあるのだが、これらは受け取り方で2つに分かれる。
1)成長分野に雇用をシフトさせ、経済成長とともに、個人にも恩恵がある
2)雇用が不安定化、より劣悪な仕事を掛け持ちしないと生活できない
かつてNHKの「日曜討論」で、日本維新の会とれいわ新選組の主張が激突した例(*1)と同じだ。一方、企業の側からこの議論を見ると、雇用のミスマッチが起きていて合わない人材は放出したいが、必要な人材は採用困難という状況にある。社内のリスキリングなどで対応しようとしているが、とても十分とは言えない。
日本人は生涯2度転職するが、米国では11度以上だという。そんな米国では、ホワイトカラーの求人が減っている(*2)。原因についてこの記事は詳しく分析していないが、おそらくは「AI革命」が進行しているのだろう。米国企業はM&Aやデジタル導入(日本でいえばDX)によって、事業構造改革をしそれにともなうリストラをした。今は次の段階で、AI導入による余剰人員を吐き出そうとしているのだ。
同様に若者の失業率が15%ほどの中国も、不動産バブル崩壊の要因もあるが、やはり雇用は弱い。両国とも、雇用の二極化が進行しているのだ。日本がそれと逆の方向に迎えるとは、どのエコノミストも予想しないだろう。一部の雇用者は1)の希望を持ち、他の雇用者は2)に怯える・・・それを政治が食い止められるだろうか?
立憲民主党代表選では「ぶ厚い中間層を取り戻す」と主張する候補もいたが、先進国では上記の二極化が止まらない。嫌われている「Global & Digital」だが、その流れを押しとどめるのは、どんな政府にも難しいと思われる。
*1:雇用流動性と経済成長 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)
*2:米労働市場は「買い手有利」に、ホワイトカラーの雇用が減少し競争激化 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)