正直「ようやくやってくれたか」との思いだ。2016年にバングラデッシュ中央銀行からSWIFT経由の不正送金があり、1億ドル以上が窃取された。北朝鮮の犯行と言われ、金融関係者には衝撃が走った。それ以降も、北朝鮮の犯罪集団による仮想通貨(暗号資産)の窃取など、サイバー犯罪で核開発などの資金を得ているのは公然の秘密であった。しかし対抗措置については、あまり報道されていない。
「Active Cyber Defense」の考え方で、このような攻撃を予期して防御するか、奪われた仮想通貨などを同様の手口で奪い返せないものか、せめて彼らがそれを使えないようにすることはできないかと常々思っていたのだ。すると、
テザーなどステーブルコイン発行企業4社、北朝鮮ハッカー集団保有の7億円相当を凍結 (coinpost.jp)
にあるように、700万ドルほどの資産凍結はできたとのこと。もちろん、かの国の暗号資産窃取は2022年には年間17億ドルに達し、GDPの5%を占める基幹産業(*1)だった。2023年には4割ほど減ったとはいえ、10億ドルを稼いでいる(*2)。そのうちの7%程度では実質のダメージというより、彼らに与える警告の意味が大きいだろう。
いくら仮想通貨が中央銀行のない、分散(ネットワーク)管理型のシステムに支えられているとしても、犯罪は取り締まるべきだ。最低限のルールも守らせることができないようでは、以前紹介したように「仮想通貨を廃止してくれ」との声(*3)が出てきてもやむを得ない。
今回、このような措置をできるようになった理由などについての報道はないが、このところサイバー空間に犯罪などについて国際連携が深化しているとの情報がある。その一つの成果と考え、これからも制裁の強化に努めてほしいものだ。このケースでは、サイバー空間の安全性を増すとともに、かの国の核兵器強化を防ぐリアル空間での安全性にも関わってくるのだから。
*1:まずは北朝鮮の脅威に対応 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)