梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

知事のAI規制法案拒否に関する報道

 先月末、米国カリフォルニア州のニューサム知事は、議会が可決したAI規制法案への署名を拒否した。欧州では「AI Act」が成立し、禁止されるAI、監督が必要なハイリスクAIなどの規制が始まっている。米国ではカリフォルニア州が、最初にこの問題に取り組んでいた。

 

米カリフォルニア州知事、AI規制法案への署名を拒否 | ロイター (reuters.com)

 

 正直まだまだ激しく変化するAIに対し、法律での規制は難しいと思うのだが、知事の拒否権発動にメディアの反応はさまざまだった。上記の記事が一番フェアに書いていて、その他の記事も総合するとニューサム知事は「リスクに対応するには不十分で、弊害も大きい。最善とは思わない」との理由で拒否した。これに対し、

 

    

 

・開発企業が技術発展を妨げるとして反対、地元大物議員も同調(産経新聞

・基本機能にも厳しい基準を設け、最善の道ではない(読売新聞)

・テック企業の巨額資金を背景にしたロビー活動が奏功(日経新聞

・全米初のAI規制法案は成立しなかった(朝日新聞

・大規模モデル以外への対処が不十分(時事通信

・大規模モデルの他、多くのAIが監視対象外になる懸念(WSJ

・規制の枠組みは技術開発のペースに合わせるべき(TBS)

 

 と報道の力点は広く分かれた。いざとなれば他州に出て行ってしまうかもしれないテック企業に視点を置いた報道もあれば、知事の拒否理由発言を中心に掲げた報道もある。「全国初はならなかった」とする朝日新聞の報道には、少し驚かされた。導入されるのが当然と思っていて、どこが最初かとのレースのように記者が見えていたとも思われる。ニューカム知事もAIリスクはあると認識していて、法案がいう、

 

・開発規模1億ドル以上

・緊急時の(手動)停止機能

・安全性テストの徹底

 

 では不十分だと拒否理由を述べている。産業界や議員の圧力はあったろうが、それを鵜呑みにした決定ではあるまい。「技術開発のペース」に合わせるため、有識者会議を作って議論をしてゆくとある。

 

 知事の拒否権発動という事実よりも、各メディアのこの問題に対するスタンスが垣間見えた案件だった。