梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

ビッグテックと原子力発電

 東日本大震災福島第一原発の事故以来、日本では原発の新設・増設はもちろん、既存施設の再稼働についても厳しい目が向けられてきた。FUKUSHIMA以前の原発事故としては、ウクライナのキーウ州プリピャチにあるザポリージャでの事故(1986年)や、米国ペンシルバニア州スリーマイル島での事故(1979年)がある。前者は「石棺」に覆われたままだが、後者が再稼働するとの報道があった。

 

米スリーマイル原発再稼働へ、マイクロソフトに20年の電力供給契約 | ロイター (reuters.com)

 

 AI利用が拡大してきて、AI(&データセンター)が大量の安定電力を必要としているから、ビッグテックが再稼働を求めたとある。このような動きはMicrosoftに限らず、今月には、

 

Amazon 原子力発電プロジェクトの推進に向けた3件の契約を完了

Google 小型原発からの電力購入契約を締結

 

 との報道がある。

 

    

 

 日本でも、NVIDIAが出資するクラウドゲーム企業<ユビタス>のCEOが、新データセンターは原発の近く(京都府島根県・九州地方)を考えているとインタビューに答えた(*1)。

 

 もともとデータセンターと原発の相性は良好だ。前者は安定した大量の電力を求め、後者はその定常的な需要を求める。その傾向が、さらに大量の電力を求めるAIの普及・利用拡大で強くなったのだ。NVIDIAが得意なAI用半導体と並んで、安定した大量電力が産業競争力(ひいては国力)に繋がることになった。

 

 軍事の専門家小泉悠氏とサイバーセキュリティの専門家小宮山氏が共著したこの書、

 

サイバー空間に触れたリスク研究者 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 では、データセンターは現代デジタル社会のグラビティ(重心)だとして、これをリアル/サイバー両面から守るべしと主張している。新政権には、原子力発電の稼働環境整備と、データセンターとセットにした破壊活動対策をお願いしたい。

 

*1:エヌビディア出資の日本企業、原発近くでAIデータセンター新設検討 - Bloomberg