今週の総選挙の主要な争点の一つが賃上げ。なかでもわかりやすい最低賃金に関して、各党の公約が乱舞した。岸田政権では、全国平均1,500円を10年かけて達成する目標としたのに対し、すぐにも全国一律1,500円にせよと一部野党が反発した。
目の前の票目当てなのだろうが、多くの政党が(時期はともかく)1,500円を目指すとアピールしていた。これに対し、経済3団体の意見は分かれた。
・経済同友会新浪幹事 3年以内に実現、払えない経営者は失格(*1)
・日本商工会小林会頭 方向性には賛同するが、地方企業にも要配慮(*2)
・経団連十倉会長 取り組みは大事だが、あまり乱暴な議論は不適切(*3)
日商は中小(というより小規模)企業の団体だから、当然の反応。同友会は大企業の中でもエクセレントな経営者が集うところゆえ、規模に関わらず経営者に厳しいスタンスである。私個人としては、新自由主義だとお叱りを受けても、この意見が真っ当に思える。
いや、下請け企業は納入先に価格転嫁できないのだとの反論はあろうが、納入先に自社の技術や品質などを盾に価格転嫁を迫って勝ち取るのも、経営者のスキルである。
そこで最後の経団連だが、納入業者に配慮した発言に見えるかもしれないが、実は会員企業向けの情報発信である。一般には、経団連は大企業(企業中の0.3%)の集まりのように認識されているが、実は会員企業の大多数は中堅~中小企業である。同友会のように大企業(経営者)寄りのスタンスをすれば、これらの企業が離れてしまいかねない。
ではなぜ中小企業が無理をして経団連入りするかというと、内外へのアピールが目的。納入先には「当社も経団連会員になりました」と、新規受注や受注増の営業ができる。それゆえ、1,500団体も集まっているわけだ。本当に経営視点の改革を考えているのは、3団体の中では同友会が最有力と考える理由である。
*1:新浪氏 最低賃金払えない企業駄目 - Yahoo!ニュース