梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

車に耳あり、もちろん眼もあり

 自家用車を持っていないせいで、私は自家用車のサイバーリスクについて勘違いをしていたかもしれない。Connected Carになると、外部から乗っ取られて暴走したり、リチウム電池が制御不能になった爆発したりするリスクのことを心配していた。2027年製車種から、中国製部品を排除する米国の規制案(*1)にはさもありなんと思っていたのだが、リスクはもっと身近なところにもあった。

 

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 きっかけはこの記事。製造業がビッグテック並みに広告ビジネスにも進出・・・程度なら可愛いのだが、移動履歴などだけでなく車内の会話を聞いてAIが判断するというのは、ちょっと恐ろしい。

 

    

 

 会話を聞くというのは、自家用車内にはマイクがあるということ。特許案の説明では「特にハードウェアの追加は不要」なので、すでにマイクはあるのだ。例えばこんなもの。

 

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 「壁に耳あり障子に目あり」ではないが、すでに自家用車は両方持っていて、私たちを監視・盗聴できる仕組みは整っているのだ。リモコンボタンではなく、音声操作ができる家電は便利である。自家用車も家電感覚になり、特にハンドルに両手をとられているドライバーにとって音声操作は有用だ。

 

 便利の裏側には、悪用の懸念がある。VIPが乗る自動車や、企業で特別に契約したタクシーだって、搭乗者の顔や服装、所作は丸見え、会話は筒抜けということになる。こうなると、おちおち車にも乗れない。家に籠っているしかないのだろうか?自宅の中でも、インターネット(IoT)家電は一杯ある。もしインターホンに盗聴マルウェアが仕込まれていたら・・・。私も、インターネットを遮断した空間に棲みたいという人も気持ちが、多少は理解できてきた。

 

*1:米国のConnected Car規制案 - 梶浦敏範【公式】ブログ