私たちはブロック経済のリスクを憂えているが、インターネット経済は基本的に世界でひとつ。国別シェアという考え方は、あまり意味がない。ところが貿易統計にはデジタル貿易なる項目があって、日本のこの分野の赤字が大きいとの報道が目立つ。例えば、
デジタル赤字、24年最大の公算 DXで収益力の向上急務 - 日本経済新聞
のようなもので、日経誌の記事にはおおむね賛同する私も、これだけは納得できなかった。デジタル赤字を減らすべく社会や企業にDXを勧める内容だが、DX推進は必然的にデジタル依存を強め、米国等のビッグテック利用を増やすはず。普通に考えればデジタル赤字は増えるはずだ。

デジタル貿易については、この論説が一番分かりやすいもの。
日本はそもそもサービス貿易全体が赤字である。まだ製造業中心の経済であり、サービス業に変貌し製造業を空洞化させた米国経済とは体質が異なる。その中で何が大きな赤字なのかというと、
1)経営・専門コンサルティング
2)コンピュータ
3)著作権等使用料
である。1)にはネット上の広告も含まれるので、単純な外資系コンサル企業の業績だけではない。おそらくコンテンツ配信サービス(CDN)もここに含まれるだろう。CDNは世界でメジャーなのは3社だけ、その中に日本企業はいない。まだ小さいが、今後伸びるであろうAIサービスもここに入るはずだ。2)はクラウド化が進んで実際のコンピュータがどこにあるかに関係なく、クラウドサービス事業者の拠点の場所で決まる。膨大な設備投資ができる企業だけがクラウド事業を世界展開できるので、これも寡占状態。
つまり1)も2)も巨大資本があるところにしか供給源はないし、寡占化されている。日本の国力として議論するなら、3)をどうするかだろう。このキーワードは「コンテンツ」である。例えばソニーがKADOKAWA(*1)買収を企画しているのはコンテンツ力を重視してのこと。また経団連が「コンテンツ省」を置くよう提案(*2)しているのも、方向性としては正しい。NHKのコンテンツを国際競争力としてどう生かすかなど、日本には素地も伸びしろもある。
単純にデジタル赤字拡大を嘆くより、次のコンテンツ産業戦略を考える方が有益だと思う次第である。