経済安全保障の議論が、サイバー分野でのリスクの話と頻発する国際紛争の話にからんできて、最近軍事の専門家と意見を交わすことが増えてきた。そんな会話の中で軍事の専門家が、
「99.9%のことは経済合理性で決まるんです。でも0.1%は経済合理性では決められません。紛争リスクが高まった今、その範囲は0.5%程度まで広がっているように思います」
と言った。私は古代アテナイの政治家の言葉「軍事費は儲からない。しかしそれがなければもっと儲からない」を思い出した。基本的に再生産につながらない「投資」である軍事費は、商人の目からは無駄に見える。しかし地中海最大の商人国家だったアテナイでも、軍備には「投資」していた。

サイバー空間での「合理性の外のこと」などは、10%以上になっているような気もする。サイバーセキュリティ業界では、かつて「セキュリティ投資を申請したら、CFOからどうやって回収するかと問われて困った」という話もあった。
企業経営者としては、0.1%か0.5%か10%かは別にして、経済合理性ではカバーしきれない部分に目を向けなくてはならない。それは社会全体でも同じことだ。先ごろ日本政府は、次期エネルギー基本計画策定にあたり「電源別の発電コスト試算」を見直している。
2040年度時点の発電コスト 原子力がLNG火力を下回る 政府試算 | NHK | 各地の原発
・LNG 20.2円 ⇒ 22.2円/1kwh(以下同)
・原子力 16.4円 ⇒ 18.9円
と、現在一番発電量の多いLNGを、原子力が下回った。再生可能エネルギーは、幅を持たせていて、
・太陽光 15.3~36.9円
・洋上風力 18.9~23.9円
だが、いずれにせよ原子力よりも安いとは言えない。原子力のコストが今回下がったのには、テロ対策などで費用は増えるが安全対策が進み事故対応の費用が少なくなったとの理由だ。
AIの利用拡大などで、ビッグテックが原子力発電利用に舵を切っている(*1)。原子力発電は必要だと思うのだが、経済合理性の内側と外側をどう考えているのか?政府にも企業にも、より詳細な説明をしてほしいと思う。