梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

市民に分かりやすい事例の説明を

 少数与党になってしまったせいか、このところ政治の話というと、税制の壁・社会保険料負担・補正予算などのことしか聞こえてこない。しばらく前まで「憲法21条:通信の秘密」に関する議論もあったのだが、この1~2ヵ月この種の話題が絶えて久しい。通信傍受に関しては、11月に政府の有識者会議が、ACDの関連でこれを行うよう答申して(*1)から、具体策が見えてこない。

 

 一時期「闇バイト」という言葉が流行り、被害も急増し命まで危うくなった現状に「おとり捜査」を求める声もあった(*2)のだが・・・。

 

    

 

 憲法に謳われているかどうかに関わらず、他人の通信を傍受するのは怪しからん行為。市民に対して政府がこれを行うのは、もってのほかである。しかしより大きな危険や犯罪行為を予防するためなら、ある程度は容認されるべきだと思う。問題はこの「ある程度」で、一般市民としては、

 

・悪い奴らが好き放題しているのは困る

・しかし政府に何でも見られてしまうのも困る

 

 のだ。「悪事はしていないが、ちょっとだけ痛い腹」は誰しもあるというもの。だから信用できない政府に対しては、プライバシー保護を盾に抵抗することになる。自らが負いかねないリスクと、通信傍受などによって自分が護られるメリットを秤にかけるのだが、その「程度」が分かりにくい。

 

 結局「闇バイト」など市民に身近な例をとって、ACDのメリットと行政側の運用ポリシーを訴えていくしかなかろう。今回、海外事情だが面白い例があった。

 

犯罪者専用メッセンジャー「Sky ECC」の暗号化が解除され約1万人が逮捕された裏側 - GIGAZINE

 

 一般市民が「闇Web」同様利用する公算がほぼないアプリ「Sky ECC」を、当局が傍受(暗号解読)してリアル逮捕につなげたというもの。こういうものもACDであり、市民を護るための手段なのだと、行政側は繰り返し伝えてほしい。もちろん正しく伝えるのもメディアの役割である。

 

*1:「能動的サイバー防御」へ国内通信も分析、通信の秘密保護で独立機関設置なども…有識者会議が提言 : 読売新聞

*2:ACDで「織田信長」を追い詰める - 梶浦敏範【公式】ブログ