サイバーセキュリティ、特にサイバー犯罪の関係者と肩の凝らない議論をしていると、よく話題になるのがデジタルリテラシーが重要か、犯罪リテラシーが重要かということ。もちろん2つ共この業界で生きていくには必要なのだが、個々人によって考え方が異なる。
私はどちらかと言えば、犯罪リテラシーの方を重視する。サイバーセキュリティ全般についていえば、リスクリテラシーである。リアル空間の例では、
・ホームドアのないプラットホームでは、決して最前列に立たない
・ホテルの部屋の前で、他人が近くにいるときは決してキーを出さない
・不特定多数の人が出入りする場では、監視カメラや警備員の位置を確認する
ようなことである。サイバー空間ではリアル空間とはケタの違う情報が溢れているが、リスクや犯罪の大まかなところは似ている。

そんなことを思っていて、今回目を止めたのは以下の記事。
6割がAI利用で「疑う力が抑制される」傾向に 均質化の罠にハマらないためのAI活用法 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
AI活用が進むのはいいのだが、AIの出力を鵜呑みにして疑うことを知らなくなる傾向の人が62%いたとある(母数は専門的職業に就く319人)。一方専門性の高い人は、AIの出力を疑って批判的に見る能力が向上したともいう。これがまさにリスクリテラシーだ。
記事は「AIの登場によって、専門家の仕事は問題解決から検証に移った」と言っている。問題解決の選択肢はAIが用意してくれるので、人間(専門家)はその専門知識と批判力(&疑問力)によって、解決法を検証すべきだとの意味だろう。これはかつて経験の少ないプログラマーが書いたコードを、ベテランがレビュアーとして評価・検証したことに似ている。
そもそも上記に挙げたリアル空間でのリスクリテラシーは、痛い目に遭って覚えるのでは被害が大きい。何かいい教科書はないかと問われたので、私は「ミステリーを読みなさい。戦史ものやスパイものもお勧めですよ」と応えている。昨年は所属するシンクタンクのサイトで、10冊の参考になる書籍を紹介(*1)した。後で考えると「疑う力」を養成する教本だったと、上記の記事を読んで感じた次第である。