梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

令和臨調提言の印象は「生ぬるい」

 先週「令和国民会議」という有識者会合が、提言を発表した。いわゆる令和臨調提言である。

 

本文:提言「持続的な社会の発展のための財政規律」:令和臨調

 

 2020年度からの「コロナ対策」が顕著な例だが、このところ例外措置であるはずの補正予算が常態化していて、財政規律は緩みっぱなしである。その結果国債残高は1,440兆円まで積み上がり、長期債券の下落(金利上昇)が進んでいる。いつ「国債の引き受け手がない」という事態(*1)になるか、経済人はみんな恐れているはず。

 

 選挙を控えた政治家は、与党も野党も有権者に耳障りなことは言えない。財務省に代表される官僚が口を挟めば「財務省解体!」のようなバッシングに遭う。そこでニュートラルな有識者が「本当のことを言おう」として出してくれる提言だと、正直期待していた。

 

もはや神頼みか、上賀茂神社の大鳥居

 結果は、期待外れである。危機感は十分理解できるが、こうすべきだの部分が生ぬるい。また、具体的な数字が少なく多くの市民に対してのインパクトに欠ける。取り上げたメディアもこんな調子だ。

 

債務残高GDP比25〜30ポイント下げを 令和臨調、財政健全化へ新提言 - 日本経済新聞

 

 10年間で30ポイント下げの意味を、数値で書いて欲しかった。私なりに表現すると、

 

・1,440兆円の国債残高を、10年間でGDP比30%分減らすのが目標

・30%とは約180兆円だから、1年あたり18兆円は減らすことになる

・今年度予算では約4.5兆円借金が増えているから、22.5兆円支出を減らすか増税すべき

・消費税増税に頼るなら、約10%UPが求められる

・加えてこの10年間補正予算は認めない

 

 となるだろう。正直これでもまだ甘い方で、一般会計しか議論していない。さらに今後増えるであろう防衛費や、インフラの改修費、基礎年金への補填などを考えれば、もっと歳出削減か増税をする必要がある。

 

 何度か紹介しているように「いずれにせよ国民負担」なのだが、財政規律を提言するなら、このくらいは踏み込んで欲しかった。そのための有識者会合ではなかったのか?

 

*1:メディアも市場も警告している - 梶浦敏範【公式】ブログ