参議院議員選挙が告示されたが、この話題が候補者や政党から語られることは恐らくないだろう。「外交は票にならない」からだし、国際協力を進めること自体が「もっと俺たちにカネを回せ」と思っている市民に受け入れられないだろうから。
先月末、EUのフォンデアライエン委員長が「機能不全に陥っているWTO」を再構築するため、EUとしてTPP参加国と協力してゆく姿勢を見せた(*1)。すでに英国は加盟しているTPPにEUが加盟するという話ではないが、方向性として、
「日本が主導し英国も加盟したTPPと協力して、太平洋圏と欧州で自由貿易を守る」
ということなので、歓迎したい。

私自身TPPの電子商取引に関して産業界から意見を述べているし、国際会議でデジタルデータ流通のメリットを強調してきた。その背景は「世界で一つのサイバー空間」である。ただそれらの会合で、農業を始めとする国内産業保護に腐心する各国政府の姿勢や、自由貿易を推進する主役のはずのWTOの問題点を教えられた(*2)。
2019年の英国での会合で、トランプ1.0政権がWTOの委員を出すことを渋り、WTOを機能不全に陥れたことを知らされた。2016年にTPPからの離脱を決めたのも、トランプ1.0政権だった。
「関税砲」を撃ちまくっているトランプ2.0政権は、当時よりも凶悪さを増し、完全に自由貿易の敵になった。そんな中、アジア太平洋諸国と欧州で(少し小さいけれど)自由貿易圏を作ろうというなら、理想形ではないが現実解なのだろう。
孤立主義に走り始めた米国と、米国とは別の意味で困った貿易相手国である中国を除いた範囲では、欧州+TPP諸国は最大の「ブロック経済」である。私の専門のデジタル分野に関しては、TPPの考え方と欧州の意識の差は大きくない。ただGDPRやGAIA-X、AI-ActなどをTPP諸国が受け入れるには、少し時間が必要かもしれない。この動き、早期に具体化してくれることを望んでいる。