梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

独裁者のツール「黄金株」

 「経済の主役は民間」というのが、資本主義の大原則。政府は脇役として、制度整備などをするのはいいのだが、直接投資したり経営に口を挟んだりするのは、この原則に反する。それでも昨今、自由主義・資本主義を掲げた国でも「安全保障」を盾に原則を逸脱することが散見される。

 

 現下に懸念しているのは、日の丸半導体企業と言われる<ラピダス>に日本政府が「黄金株」を持つという話。

 

政府、ラピダスの黄金株保有へ 重要事項に拒否権で安保リスク備え - 日本経済新聞

 

 どの程度出資するかは、まだ明らかでない。経営に口を挟める例として記事の挙げた、NTT、日本郵政、IPEXは政府が事実上の黄金株を持っている。NTTについてはNTT法を改正して「政府が1/3以上の株を持つこと」との規定を見直そうとの動きもあったが、実現には至っていない。日本郵政の体たらくについては、今更申し上げるまでもない。

 

    

 

 確かに、半導体は次世代の国力を支える技術だとの見方がある。ただジャーナリスト湯之上氏は、衆議院の委員会で「半導体産業政策に、経産省・革新機構・政投銀が出てきてアウトになった」と批判している(*1)。

 

 日本製鉄のUSスティール買収も、トランプ2.0政権が「黄金株」を持ったことで実効性があるのか疑問が残る。確かに100%子会社化になったが、労働組合に泣きつかれたり、米国業界団体のロビーイングがあったりで、経営の意思が阻止されかねない。

 

日鉄の「USスチール買収」は結局、成功だったのか? 完全子会社化、最終的な「勝者」は誰か|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 

 この記事の著者加谷珪一氏は、私の信頼している気鋭の経済学者だが、指摘のように習政権がアリババグループを叩くのに使ったのが「黄金株」だったことを忘れてはいけない。共産党一党独裁政権ならあるかもしれないが、せめて自由主義・資本主義国家ではこのような暴挙は慎んでほしいものだ。「黄金株」などは独裁者のツールなのだから・・・あ、トランプ2.0政権も独裁なの?まさか、日本も・・・?

 

*1:そのDRAMは何に使われるのか? - 梶浦敏範【公式】ブログ