梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

サイバー被害を交番に届け出る日

 社会への実害が良く見えるようになってきて、サイバーセキュリティへの関心がこれまでになく高まっている。特に消費財であるビールが手に入りにくいという状況は、多くの人がサイバーリスクに気付いてもらうきっかけになった。そんなわけで、いろいろな場でお話しさせてもらう機会が増えた。

 

 聞いてくれる人たちは、ほとんどサイバーセキュリティの関係者ではなく、デジタルに詳しくない人もいるはずだ。そんな会合で、ちょっと気になる質問が出た。警察庁の人と並んで質問を受けていたのだが、サプライチェーンの中の小規模企業をどうしてくれるのかという質問。いつものように、業界団体等の垂直・地域商工会等の水平・特殊な企業のピンポイントの3点(*1)を上げたのだが、質問してくれた人はそれに納得しなかった。しかしITの分かる人もいない零細企業では、ほぼ対策はとれないので、議論は平行線になった。

 

        

 

 本音を言えば、そこで警察庁の人に「そのケースは、交番に届け出てください」と言って欲しかった。もちろん、今すぐにそんなことは無理だ。お巡りさんが日々、

 

・出かけるときはカギをかけましょうね

・不信な人がいたらすぐに教えてください

 

 と市民の防犯意識を啓発し、地域の治安を見守っているように、日本の隅々まで根を張った警察組織が、サイバー空間でも治安活動をしてくれたらと以前から思っている。そして、この数年警察組織の対サイバー犯罪能力は急伸しているのだ。かつて都道府県警が実行組織で、警察庁は行政組織だった。これは戦前全国を統べる警察組織が誤った統治をしたことへの反省なのだが、県境はおろか国境もないサイバー犯罪に対しては日本統一の捜査組織が必要になった。

 

 それが警察庁サイバー局と傘下の捜査機関である(*2)。海外の捜査機関と日本の連携は、それまで個別都道府県警とだったが、サイバー局に統一されたことで連携度合いは格段に向上している。サイバー犯罪が激化するにつれ、捜査機関も強化されていくだろう。やがては「サイバー被害に遭いました」と、一般市民が交番に被害届をするためにやってくる日が来るだろう。その日が待たれる、昨今のサイバー犯罪状況である。

 

*1:経営マターのサプライチェーンリスク - 梶浦敏範【公式】ブログ

*2:かつてなら一部野党、メディアが(治安維持法を忘れたかなどと)騒いだはずだが、そんな抵抗はなかった