梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

<スターリンク>も妨害できる!

 2022年にロシア軍がウクライナに侵攻するにあたり、ウクライナの社会インフラへの攻撃を加えた。電力インフラや通信インフラを破壊すれば、社会全体が混乱し抵抗力を弱めることができるからだ。手段としては、ミサイルのように物理的なものに加えてサイバー攻撃も使われている。

 

 ところが侵攻をある程度予期し、クリミアを獲られた時の轍を踏まないように、ウクライナ側は対策を練っていた。通信インフラに関しては、地上の通信網に加えて<スターリンク>を準備していた(*1)のだ。

 

 スペースX社は当時でも8,000基ほどの衛星を使っていて、低いコストで衛星経由のインターネットインフラを提供できるようになっていた。今は目標とする12,000基に迫っていると思われる。戦争以外でも、能登地震の折に<スターリンク>は役に立った。非常時の通信インフラとして実績を積んでいるわけだ。

 

 

 ところが、どのような設備にも弱点はあるもので、今回イラン政府が大規模な反政府デモ対策にインターネットを遮断した時、<スターリンク>すら妨害されて通信が出来なくなったらしい。

 

イラン、史上初の衛星インターネット遮断 スターリンクに「キルスイッチ」発動 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 

 経済制裁などで市民の暮らしが厳しくなり、強権的な弾圧も行われていることから、今回は全土にわたる大規模なデモが起きた。デモ隊や反政府勢力がインターネットを使って連携していると考えた政府側は、インターネットを遮断するという手段に訴えた。

 

 すでに昨年アフガニスタンタリバン政権が、48時間とはいえインターネット遮断をした前例がある。これに対して<スターリンク>で連携を保てるようにと、イーロン・マスク氏は(ウクライナと同様)無料開放をしていた。ところが今回、イラン政府はGPS妨害などの手段で<スターリンク>すらも無力化したとこの記事にある。

 

 重要インフラを護るための一種のいたちごっこだが、こういう手段もあることは覚えておきたい。

 

*1:軍事インフラとしての<スターリンク> - 梶浦敏範【公式】ブログ

*2:イラン政府、インターネットを遮断か 対抗してイーロン・マスク氏がスターリンクを無料開放? - ITmedia NEWS