梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

外国語学習は、学問から趣味・教養へ

 50年ほど前に私が工学部の学生だった頃、悩まされたのはドイツ語講座。正直訳が分からないのに、卒業のための必修科目だった。これはさらに50~100年以上前、工学系の技術をドイツ語圏から学んでいたころからの慣習である。学ぶべきこと(技術者も技術論文も)は外国にあるので、学問を究めようとするなら基礎としての外国語は必須だった。

 

 だから外国語も学問の内に入っていたのだが、その時代は終わりつつあると思う。AIの発達によって、翻訳が文字だけでなく音声からもリアルタイムにできるようになったのだ。例えばこんな眼鏡が登場した。

 

現実になった「翻訳メガネ」の衝撃。日本人の語学力の常識が変わるかも | Business Insider Japan

 

 「Even Realities」のスマートグラス「Even G2」は、視野に翻訳文を表示してくれるので、相手から視線をそらさないで外国語の会話を翻訳・表示してくれたものが読める。価格も10万円ほどからある。

 

フランクフルトのマルクト

 これなら公式の国際会議を、同時通訳の仕組み(*1)がなくても開催できる。もちろん会議中のサポートだけでなく、AIは議事録の素原稿も複数の言語で作成してくれる。こうなると、外国語それ自体は学問であることは必須ではない。やはり、

 

「もう学ぶ意味はあるのか」AI翻訳が広がる中国大学、外国語学科が消え始めた

 

 という考え方も出てきた。ただ、日本の調査会社が都内の英語学習に意欲ある400名あまりを対象にアンケート調査をしたところ、

 

・AI翻訳が深化しても、外国語学習意欲は衰えない 85%

・2026年に身に付けたい力はスピーキング力 59%

 

 と前向きな答えが返ってきた(*2)。「英語学習に意欲ある人」が対象なので、少し割り引いて考えてもいいが、公式会議はともかく外国人と交流したいので外国語・・・というニーズはあると思う。

 

 つまり高等教育における外国語は、学問ではなく趣味・教養として扱われるべきものになるということだ。ドイツ語が苦手の私も、ドイツ企業との合弁で渡航した時や、プライベートの旅行では短い会話もするようになったことでもあるし。

 

*1:複数の通訳者、専用ブース、レシーバーや通信設備等。設置運用するのに最低50万円ほどかかる

*2:AI翻訳が進化しても英語学習の意欲「下がらず」85% | 株式会社スピークバディのプレスリリース