梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

持ち出しならぬ「持ち込みリスク」

 ある企業のCISOと話をしていたら「データを社外の持ち出されるリスクばかり考えていたら、勝手に持ち込んできた事案が発生して困惑した」とこぼされた。これまで、データを不正に持ち出すケースについては何度も述べてきた。エスピオナージュ的な機密漏えいほど派手でなくても、退職者が顧客名簿や名刺を持ち出すケースは少なくない。しかし考えてみれば、持ち出されたデータはどこかには持ち込まれるはずで、企業として意図せず起きたことなら、これは確かにリスクだ。

 

 そういえば、生命保険会社が出向者経由で顧客情報を入手し、現場の営業活動に利用していたという事案が複数報道されている。企業経営者が意図したというのではなく、業界の慣行に近いものだったらしい。

 

生保4社情報持ち出し3500件、社会常識外れた行為-顧客不在の競争に - Bloomberg

 

    

 

 この件についても、企業経営上どのようなデータが必要で、それはどこにあってどう管理されているのか、廃棄まで含めたライフサイクルはどうなっているのかを、経営者は抑える必要がある。コインの裏表だが、不要なデータがないかどうかというチェックも必要ということだ。

 

 セキュリティ・クリアランス制度の議論の中で、政府の機密情報を民間も「Need to Know」な人には知らせてもらえるとのメリットが強調された。しかし、一方で本当に必要なもの以外は貰わない姿勢も必要だと思った。この場合は保持していること自身がリスクのある情報なので「余計なものは有害」なのだ。

 

 改めてデータの整理を、今は持っていないものについても行うべきだったのだ。しかし今は「AI Agent」が勝手にデータを集めてくる時代(*1)、従業員への徹底と「AI Agent」の教育、どちらが難しいのだろうか?いずれにせよ、経営者は両方に心を砕かなくてはならないようだ。

 

*1:「AI Agent」もIDを持っている! - 梶浦敏範【公式】ブログ