まだ5G通信網が、技術的には完成していながら普及していなかったころ、米国で中国のHuaweiとZTE製5G機器を排除する規制が掛けられた。両社の機器は、性能的に日欧米のメーカー品より優れていたとは思えないが、何しろ安かった。
「西側」の通信網が、両社の機器で埋め尽くされてしまうと、中国共産党政権に通信内容が筒抜けになるのではとの危惧が、各国の政府にあった。米国と日本は早くに禁輸し、中国と経済的結びつきの強かった欧州も、通信網での中国製品排除に向かっている(*1)。
しかし情報漏えいのリスクは、通信網だけにあるわけではない。「中国製造2025」戦略に従って量産されるほぼすべての機器は、インターネット接続能力を持っている。それを恐れて、ワシントンDCの地下鉄車両は中国メーカーを抑えて日本企業が受注したし、中国製EVバスが乗っ取られるリスクが報道されたこともある(*2)。

見落とされがちなものに、自動車(特にEV)がある。中国製のEVはエコ意識の高い欧州で人気で、高いシェアを誇る。自動車には各種センサーがついていて、自らの状態だけでなく運転者や同乗者のデータ、あるいは街中のデータを収集することもできるのだ(*3)。このリスクに対し、特にロシアとの軍事的対立が懸念されているポーランドで、中国製自動車の軍事施設への乗り入れを規制を検討するとの報道があった。
中国製車両の軍事施設立ち入り禁止、ポーランドが検討 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
当該軍事施設に勤務する人が、たまたま中国製自動車で通勤していたとする。彼に悪意は無くとも、愛車が勝手に施設内の映像・音波・電波などを拾い、中国政府に送信する。それらのデータを受け取って分析したロシア軍が、ポーランド軍の行動などを予測するかもしれないというリスクである。正直疑えばきりのない話だが、安全保障に直結するなら検討せざるを得ないだろう。
*1:EU、重要インフラでの中国製機器の使用を禁止へ=FT | ロイター