梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

意義あるリカレント教育と転職

 日本経済低迷の原因が労働生産性の低さにあるというのは、多くの識者が一致する点。生産性向上にはリカレント教育が必要というのも、ごく常識的な改善策だ。しかし現実には、雇用側も労働者側もなかなか本気になってくれない。

 

外資やジョブ型雇用は女性の味方 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 で紹介したような状況に、多くの企業や労働者が安住しているからだ。雇用流動性に関しても、より高収入・高条件への転職は少なく、待遇が悪くなる転職が多いのが現状である。

 

 この閉塞感を打破するためには、儲かる産業が積極的に外部人材を登用しその成果を広く広報する必要があると思っていた。ただ、儲かっていると声高に言う日本企業(&人)は多くないし、外部人材の登用についても広くアピールする話題ではないとの意識もある。

 

    

 

 しかし、今回サイバーセキュリティの有力企業である(株)トレンドマイクロが、外部人材登用を積極的に行い、100倍の競争率になっているとの記事があった。

 

トレンドマイクロ、非IT職をサイバー人材へ 倍率100倍 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 サイバーセキュリティ人材の不足は、日本に限らず社会問題になっているが、技術力がずば抜けているハッカー的人材だけでなく、企業業務に精通していてかつセキュリティ知識(リテラシー)を持っている人材の不足が顕著だ。このような人材を私の所属するシンクタンクは「プラス・セキュリテイ人材」と呼び、2019年から彼(&彼女)を教育し処遇する環境を整備すべきと訴えてきた。

 

Human-Development-Plus-Security.pdf (j-cic.com)

 

 今回のトレンド社の取組みは、まさにそれを実践したものだし、100倍の競争率というのは非常に嬉しい話である。サイバーセキュリティの重要性が認識され、それに向けた人材を含めた投資が積極的に行われるようになった証でもある。

 

 この分野に限ることではないが、社会的に重要で評価される職種を他の職種の人材から採用すること。これが真に意義あるリカレント教育と転職である。