梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

港湾関連企業でのサイバーリスク

昨年7月、名古屋港施設がサイバー攻撃を受け、港湾機能を一時喪失したことは、記憶に新しい。日本政府は、経済安全保障推進法の基幹インフラとして「物流」などは指定していたが、今年になって「港湾」も加える(*1)ことにした。日本経済は輸出入に多くを…

デジタル貿易自由化への逆風

私のデジタル技術者としての会社人生、後半は「Global & Digital」を推進する政策活動が中心となった。国ごとに違う規則と、国境が存在しないサイバー空間の矛盾を、少しでも緩和できるよう、各国政府に働きかけたものだ。TPPの電子商取引章に、 ・国境を渡…

NVIDIA・・・やはり製造業ではない

先週、日経平均株価が34年ぶりの高値を付けた。世界経済が好調とはいえず、種々の懸念の中でインフレは収まらない。いやな雰囲気なのに、株式市場は(米国含めて)好調だ。そのけん引役と言われるのがデジタル産業、特に今回は半導体産業のNVIDIAの好決算が…

半導体関連企業は守らないの?

「もしトラ」の続報である。先週米国事情に詳しい有識者から種々教えてもらい「予測不能なトランプ政権への対処法を考えなくては」という気になった。とにかく自国産業を守り、雇用を守るスタンスだから、今月紹介した日本製鉄のUSスチール買収など論外(*1…

沖縄のハコモノ行政、変わらず

今月、家内と4年ぶりの沖縄旅行に出かけた。春節と日本の三連休が重なって、とても混みあう時期だった。往復のフライトも満席、コンドミニアムの予約も希望のところはとれなかった。空港でも、街中でも、モノレールの中でも、外国人の会話が目立つ。南国か…

バイデン対トランプ、見通しは五分五分

米国事情に詳しい人に、米国政治状況の現状分析を聞く機会があった。「もしトラ」とか「ほぼトラ」という状況の中で、今後どうなっていくのか、我々はその事態にどう備えるべきかを考える貴重な機会である。 今年の大統領選挙もそうだが、前々回2016年の選挙…

「いずれにせよ国民負担です」

自民党の裏金問題が「政治とカネ」論議に火をつけ、予算委員会では政倫審・連座制・政策活動費などなど国会議員周りのQ&Aがほとんどの時間を占めている。どれも自民党としては呑みづらいことで、岸田総理らの回答は歯切れが悪い。「こんなことは早く政倫審に…

ブレるバイデン大統領の危うさ

「もしトラ」や「いまトラ」という現象に、世界は息を呑んで行方を見守っている。最大の問題はトランプ候補の予測不能性であって、世界秩序や常識の崩壊すら思わせる。そんな候補がなぜ強いのかと考えると、結局現職バイデン大統領が弱いからだということに…

いわゆる「ベンダー・ロックイン」ですね

先月、英国に出張していた時、富士通の子会社(旧ICL)の幹部が議会公聴会に呼び出された。700名にもおよぶ郵便局長・従業員に。ポストオフィスが公金横領の冤罪を着せたとされる事件。今年の正月TV特番で連日放映され、大きな社会問題になっていたのだ。そ…

自動運転の産みの苦しみ

新しい技術が開発され、実用化され、普及していく過程においてはいくつものハードルがある。リソースの規模として、私の実感は、 ・基礎的な技術を固め、なんとか利用できそうなものを完成させる開発 1 ・使ってもらって不具合がないように、安全措置などを…

ハイテク自動車盗とMaaS安全対策

昨年の車両盗難件数が公表されて、被害の第一位はランドクルーザー(450件)だという。以下、プリウス(282件)、アルファード(184件)となっていて、この3年間被害上位10車種が、いずれもトヨタ&レクサスなのだという。 車両盗難被害の2位はプリウス、1…

「もしトラ」「いまトラ」の経済政策

「もしもトランプが返り咲いたら」が議論されているが、「いまもうすでにトランプの影響が政策に出てくる」になっているとも伝えられる。その影響とは、例えばウクライナ支援と対移民強硬策を抱き合わせにした予算案にトランプ候補が反対していることから、…

今でも「鉄は国家」なのか?

19世紀ドイツの有名な政治家ビスマルクは「国家は血なり、鉄なり」と語り、鉄血宰相と呼ばれた。近代国家(Society3.0:工業化社会)を形成するには、より良質の鉄鋼生産能力増強が必要だった。 日本でも官営八幡製鉄所の開業(1901年)にあたって、初代首相…

巨大ITの決算、株価&AI

先週、巨大ITと称せられる5社の2023年10~12月期の決算発表(*1)があった。各社増収、増益で、日経紙は「巨大IT再点火」と見出しを付けていた。改めて、アマゾンの売上高約1,700億ドル(前年同期比14%増)というのはとんでもない値だと思う。年間に直せば…

もう一人「古い戦友」からの贈物

昨年、NTTグループのCISOであり、サイバーセキュリティ業界の「戦友」でもある横浜信一氏から贈られた書「サイバーセキュリティ戦記」をご紹介(*1)した。今年になって、もう一人古い「戦友」から「テックラッシュ戦記」という書(*2)をいただいた。NTTグ…

重要経済安保情報の扱い

何度かこのブログでも取り上げてきたセキュリティ・クリアランス(SC)制度の法整備が、ようやく進みそうだ。自民党裏金問題の追及に明け暮れる事態で、能動的サイバー防御(ACD)の法案も通常国会では見送られる(*1)と言われ、SCの法整備も難しいかと思っ…

幼児教育は、言葉をたっぷり

AIの先端研究者のインタビュー番組をいくつか見た。参考になったのは、次のようなフレーズ。 ・Chat-GPTに代表される生成AIの基本は、大規模言語モデルである ・単純に言うと、言語の列を見て、次の言葉(単語)を予測するもの ・それまでのAIは、言語の列(…

外務省飯倉公館でのパーティ

この日は、麻布台ヒルズの隣にある外務省飯倉公館にやってきた。この週末、一度スピーカーを務めたことのある<日英21世紀委員会>が久々に日本で開催されるのだが、英国委員たちを歓迎する外務省主催のパーティに参加することになったのだ。 中曽根・サッチ…

新たな宗教戦争の火種

以前、デジタルデータとしてインターネットのそこかしこにある私自身の写真・動画・音声・(このブログのような)言説を集積することで、私の死後も何らかの活動ができる可能性を紹介(*1)したことがある。その後発表された「Chat-GPT」など、大規模言語モ…

経済安全保障と農業保護

先週は、欧州で「農家の乱」が頻発した。南フランスから始まった農業従事者のトラクターによる道路封鎖や施設封鎖、酷いのになるとスーパーマーケットに家畜の排せつ物をまき散らしたり、食品輸送トラックを止めて荷物を放り出したりした。全国に広がったデ…