梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

中国国境の壁が高くなる

世界経済の発展には、国境を越えた「ヒト・モノ・カネ・情報」の自由な流通が必要だと、私たちは思っている。東西冷戦終了後の(今にして思えば短い)期間、世界の一元化は進んだ。その時期は、インターネットの普及とデジタリゼーションの波が非常に高くな…

援けたいのは人か?企業か?(後編)

政府が言う「だれ一人取り残さない」政策対象は、やはり人(市民)であるべきで、法人ではないと思う。雇用があると言っても、経営に問題があって従業員への還元も不十分、諸般の規制にも反し、法人税も払っていないような企業なら延命させない方がいい。 ち…

援けたいのは人か?企業か?(前編)

政治スローガンは悩ましいものだ。「中小企業は国の宝」「だれ一人取り残さない」と掲げて、公に反対できる人は少ない。しかしいずれも、現実的には難しいテーマだ。考え方としては、 ・働きたい人は、だれ一人取り残されずに働けるようにする ・雇用のほと…

NVIDIAの業績好調に想う

先週、証券会社の人と話をしていて「NVIDIA株まだ上がりますよ」と言われた。その時点で1株500ドルほどだったのだが、750ドルまでは行くという。この数ヵ月で株価は上昇し続けていたが、売上高・営業利益が急増、自社株買いも増えて絶好調である。 日経平均…

日本経済に好転の兆し?

ウクライナ紛争や移民問題、エネルギー問題に熱波が追い打ちをかけ欧州の景気が後退しつつある。米国景気は逆に過熱気味、中国はデフレに陥るかもしれないという。そんな中、日本経済が好調だとの報道があった。株価・税収・設備投資・賃上げなど、大企業に…

普通のサイバーセキュリティ国家

先週の米国メリーランド州キャンプ・デービッドにおける日米韓三ヵ国首脳会議は、成功裏に終わったといえるだろう。日本国内には「米国の戦争に巻き込まれる」との批判もあるのだが、北朝鮮・ロシア・中国という核兵器保有国に隣接している日本にとっては、…

中央リニア新幹線の意味

先週、太平洋側の大動脈である東海道・山陽新幹線が大いに乱れた。速度の遅い台風7号の影響で、近畿地方では強風も吹いたし、非常に広い範囲で豪雨が観測された。おりからお盆の帰省ラッシュ、帰省先から帰りたい旅行客で各駅や車内は大混雑した。丸一日停…

NTTグループの「Intelligent Dozen」

このところ、国際情勢の緊張やサイバー犯罪の増加によって、サイバーセキュリティ関連の情報が多くなってきた。新聞に知人の名前が載ることも増え、関連書籍の出版も急増している。今月は、2冊新刊書を送っていただいた。1冊目は、NTTHDのCISOである横浜信…

AI学習利用規制(北風vs.太陽)

Web上の記事や画像は、特に制限しない限りは、何人が参照しても構わない。いわば人類の共有財産だ。もちろん、版権元に断りなく剽窃したり変造したりすれば、著作権法などに違反することになる。生成AIが、これらのデータを学習して成長することは、必然の流…

日本政府のAI運用指針案

生成AIの登場は多くの人達にインパクトを与えたので、各国政府が(AI全体についての)規制を検討し始めた。G7各国は「広島AIプロセス」で信頼できるAIを求めていくことでは同意したものの、日米はソフトロー指向、欧州はハードロー指向が鮮明になっていた。 …

核廃絶論と核抑止論だけなの?

日本の8月は鎮魂の月でもある。1945年の夏、ソ連の侵攻や終戦、そして何より2つの核兵器が日本列島に降って来た。私の親父は長崎の原爆投下を、約40km離れた大村空港(現在はヘリポート)で見た。それだけ離れていても、爆風はすさまじかったという。 広島…

被害に遭うと対策にも力が

お盆休みの前に、多くのメディアが「中国軍が防衛省をハッキングした」とのニュースを流した。元になった報道は<ワシントン・ポスト>のものと思われる。 中国軍が防衛省にサイバー攻撃と報道、政府は詳細コメントせず - Bloomberg 先週紹介したように、NIS…

ウクライナに学ぶサイバー防衛

ロシアのウクライナ侵攻は、サイバー空間とリアル空間の双方がからむ本格的な「ハイブリッド戦」となった。クリミア侵攻以降警戒感を強めたウクライナ政府とそれに協力する西側政府や民間機関は、少なくともサイバー空間の防衛についてはこれまでにない規模…

真のリスクはここから始まる

内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は、政府のサイバー防衛の要である。2000年に、内閣府に設置された「情報セキュリティ対策推進室」がルーツで、以降政府内のみの留まらず、民間含めた日本全体の安全・安心のための施策を展開してきた。数次の「サ…

これもサプライチェーン攻撃のひとつ

先月、名古屋港のコンテナ管理システムがランサムウェア攻撃を受け、港の運営に支障が出た。その内容についての報道が出るようになって、いくつかの教訓が得られた。 名古屋港システム停止、脆弱なVPN狙われたか…最新「修正プログラム」適用せず無防備状…

"Under 40s"の世代に期待する

一部研究者や、実務の専門家だけのものだったサイバーセキュリティという言葉は、2010年代から徐々に人々の間にひろまってきた。 ・ロシアのウクライナ電力施設等への攻撃 ⇒ 軍事関係者、重要インフラ事業者 ・日本年金機構やグローバル企業への攻撃 ⇒ 大企…

サイバー兵士の採用と処遇(後編)

先日、陸上自衛隊で指揮官だった人らと、本件について話す機会があった。彼らが指摘したのは、民間人として完成した人だけでなく、もっと若い人を採用すべきだということだった。ある元陸将によれば、 ・サイバー攻撃先進国(!)北朝鮮では、10歳前から素質…

サイバー兵士の採用と処遇(前編)

最近気づいたのだが「NHK解説委員室」というサイトがあって、ニュースでイラスト入り解説をした内容が、イラスト込みで掲載されている。普通の人にも分かりやすく、かつ見逃し配信の役割も含めて、なかなか良いサイトだと思う。 自衛隊 サイバー人材を獲得せ…

異次元の少子化対策と婚外子

「静かな危機」と呼ばれる少子化問題、日本に特有のことではなく、先進国ならどこも抱えている課題である。特殊出生率が2を越えているという米国だって、増えているのは移民であって、WASPの人口は減り続けている。 岸田政権は異次元の少子化対策として、年…

バイデン政権の危機感の表れ

入社5年目、まだ30歳前だった私は、突然の異動命令で田舎の事業所から本社機構に転勤した。そこは、複数の事業所からひとりずつ集まった幹部スタッフ部門。田舎事業所の狭い世界では知ることができない、様々なことを経験した。中規模の事業所から来た課長…