昨年の生成AIの登場は、いろいろな社会的ムーブメントを引き起こした。極端なものは「シンギュラリティ」がやってきて、人類が滅ぶのではないかというもの。そこまではいかなくても、誰でも新しいテクノロジーに対しての恐怖感はあったと思う。一般にAIと人類の関係については、
1)AIが人間の職場を奪い、社会不安を広げる
2)AIを使える人、使えない人による格差が広がる
3)AIを使うことによって、人間がより効率的に仕事ができる
4)AIをヒントにして、人間がより創造的になれる
などの議論がある。1)は機械化や情報化によって、平等社会が崩れ中間層が没落したのだが、それがより高給のホワイトカラーに及ぶというもの。そして2)では、ごく一部の(1%?)人間だけが利得を得て、他は「We are 99%」になってしまうぞという警告。
ただ3)のようになること、しかも比較的多くの人がそうなることはある意味明白。問題は前項目の社会的マイナスと、3)の社会的プラスがどうバランスするかだった。しかし、私は必ず4)はあると信じていて、何かその兆候はないかと気を付けていた。すると、
AIの登場で人間の囲碁のレベルが劇的に向上していることが明らかに、囲碁以外の分野でもAIが頭打ちになった分野に成長をもたらす可能性 - GIGAZINE
という記事が見つかった。囲碁のような「AI先行分野」で、人間の能力がUPしたとのレポートである。確かに囲碁界では、定石も「AI以前」「AI以後」と分かれてしまい、若い棋士たちが積極的にAIを取り入れることで、成績を伸ばしている。これは多くの関係者の認識だったが、これまでは印象に過ぎなかった。それが科学的にも証明されようとしている。
プロだけでなく、僕らアマチュアでも、NHK番組のAIによる進化(*1)で、ちょっとは強くなれそうな気もする。まだちいさな世界での一つだけの例ではあるが、上記4)を探していた者にとっては貴重な実例。AIは人類の敵ではなく、強い味方なのだと多くの人に理解してもらいたいものである。
*1:上のバーが勝率、右下が予想手、これに現状の盤面と、棋士による解説が付く