梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

デジタル窃盗のフォレンジック

デジタルデータの窃盗罪というのは、各国の刑法にも存在していない。デジタルデータは「無形財物」なので、形あるものに関する法律は適用されない。また無体財物の窃盗に関する罪は、電力を盗む以外は法整備されていない。 今回、デジタル法制とフォレンジッ…

「中堅企業」支援の方向性(3/終)

では「中堅企業」と指定されると、何が優遇されるのか?それについては<産業競争力強化法>を改正するということしか、記事からは読み取れない。そもそも大企業の中小企業の違いとは、税法上は「資本金が1億円以下かどうか」である。昨今の「COVID-19」禍…

「中堅企業」支援の方向性(2)

先々週のNHK「日曜討論」で、実業家/著述家の冨山和彦氏が「M&Aで事業が優れた経営者のもとに集まれば、課題の多くは解決する」と発言していた。課題の中には「DX with Security」も含まれているに違いない。以前経済財政諮問会議委員だったデーヴィッド・…

「中堅企業」支援の方向性(1)

私は、100以上の業界団体が加入する業界団体SC3(サプライチェーン・サイバーセキュリティ・コンソーシアム*1)でも仕事をしていて、サプライチェーン上の弱い輪である中小企業のサイバーセキュリティ能力をどう高めてもらうかの議論を数年にわたって続けて…

後期高齢者達のサイバーセキュリティ論

私が勤めていた企業グループでは、伝統的にOBの扱いが手厚い。以前はOBの意向がビジネスに影響を与えるきらいもあったが、それは危機を迎えての構造改革によって払拭(*1)された。私も2度目の定年を迎えているが、昨年から「社友クラブ」という冊子が送ら…

ハッカー集団「LockBit3.0」の跳梁

このところ、毎日のようにランサムウェア被害の記事が出る。主だったものだけでも、 ・金融サービス会社ION ・ボーイング ・オーストラリアの港湾会社 ・中国工商銀行 が挙げられるが、ほぼすべてでハッカー集団「LockBit3.0」が関与していると思われる。 情…

APEC会合に合わせた外交交渉

先週、米国東海岸カリフォルニア州は大忙しだった。APECの首脳会合が開かれたが、それに合わせた日程で、多くの外交交渉が持たれたからだ。世界が最も注目したのは、1年ぶりの米中首脳会談。東欧や中東で紛争が激化していて、南シナ海や台湾海峡の緊張も高…

ロボット・AI導入助成金の適用範囲

結局は赤字国債を増やすことになる、今回の大型補正予算。「COVID-19」対策として安倍内閣のころケタの違う大型補正を組み、国の借金は増える一方である。加えて補正予算は精査が甘く、不要不急のものが交り込んでくる可能性が高い。ほんの氷山の一角だろう…

日本のサイバー防衛、2027(3/終)

大学教授は産業界から政府を動かせといい、シンクタンク研究員はこういう安全保障環境を知って欲しいと言った。御二人の提案に異論はないのだが、参加者の顔色(当惑?)を見て、一言言っておく必要があると手を挙げた。 ・今日はサイバー空間の話だが、それ…

日本のサイバー防衛、2027(2)

続いて説明に立ったのは、シンクタンクの上席研究員。民間人だが政府の安全保障期間への出向経験があり、今も某機関を兼職している。日本には民間人も対象としたセキュリティ・クリアランス制度はまだなく議論途上だが、公務員を対象とした機密保持に関する…

日本のサイバー防衛、2027(1)

この日は、経団連会館でサイバーセキュリティの関連会合。テーマは「安全保障の中のサイバーセキュリティ」で、この分野が専門の大学教授とシンクタンクの上席研究員がゲストスピーカーである。 一般企業では、産業界のサイバーセキュリティ振興や、産業政策…

ちょっとプアボキャな天才

英国が主催した「AI Safety Summit」の記事が、いくつか出てきた。その中で一番面白かったのが、スナク首相とイーロン・マスク氏の対談。<Forbes誌>はその光景をシュールだったと評している。 イーロン・マスクが英首相に語った「AI関連の珍発言」5つ | Fo…

まずは北朝鮮の脅威に対応

東欧に続いて中東でも火の手が上がり、リアル空間での戦闘も激化しているが、見えないサイバー空間での戦闘も同様に激化しているはずだ。リアル空間ではそれなりの法規制、条約等の枠組みがあるが、サイバー空間ではそれも乏しい。紛争当事国以外も比較的自…

FortinetとALAXALA

ある会合で、Fortinet-JapanとALAXALAネットワークスの幹部とお会いした。Fortinetは、世界最大手の統合脅威管理(UTM)の製造販売メーカである。激化するサイバー攻撃の大半はネットワーク経由だから、ネットワークセキュリティの最大手ということで、サイ…

経営者こそリスキリング

今週のNHK「日曜討論」、テーマは人手不足と賃金UPだった。普通の経済モデルでは人手不足なら賃金が上昇するのだが、今の日本はそうなっていない。その原因は、 ・非正規労働者が増えすぎた ・労働組合が正社員しか守らない ・ブラック企業が少なくない ・多…

IT協会のサイバーセキュリティ研究会

(財)企業情報化協会(通称IT協会)は、企業のDXなどを促進するためのイベントや勉強会を多数企画・実施している。私もいくつかの企画に参加させてもらっているが、中心となっているのは「サイバーセキュリティ戦略マネジメント研究会」。今年で第9期を迎…

国際会議「AI Safety Summit」

先週、英国で「AI Safety Summit」が開催された。ウクライナ紛争・中東危機・台湾海峡の緊張などで、グローバリズムは終わったと言う有識者もいるが、国境のないサイバー空間が経済社会に占める比重が飛躍的に増えていて、国境を閉ざすことの意味は小さくな…

米国大使館での意見交換会

また、米国大使館からお声がかかった。本国から専門家が来たので、意見交換をしたいということ。専門家のCVは添付されていて、長年政府機関で国家安全保障に携わり、この20年程はサイバーセキュリティを専門としていて、今は某セキュリティ企業に所属してい…

イスラエル対イラン、サイバー空間の暗闘

イスラエルが闘っている相手は、テロリストとしての<ハマス>なのだが、<ハマス>はイランからの支援を受けなければ存続できていない。レバノンにいてイスラエル北部を脅かしている武装組織<ヒズボラ>同様、イランがイスラエルに向けた「刺客」と考える…

デジタルが嘘をつくとは限らない

これまで何度か、デジタル(&AI)に関してフェイクを流すことがあると注意を喚起してきた(*1)。これまでのメディアとは桁違いの速度で、情報が生成・加工・拡散されてしまい、社会に大きな影響を与えるからだ。その拡散力は、例えば「#増税メガネ」がト…