梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

気付いた記者はいた

今月「骨太方針2023」が閣議決定された。これは夏から始まる次年度予算折衝のベースとなるもので、ここに文言がないと新規の予算申請はまず通らない。この「方針」が導入された小泉内閣の頃はメディアも大きく取り上げ、担当大臣がジャーナリスト相手に激論…

欧州議会の「AI Act」

今月、欧州議会が「AI法」の承認に関する投票を行った結果、圧倒的多数で可決された。世界に先駆けたAI規制を本格的に議論するスタートラインに、EUは立ったことになる。日本のように議会で議決すれば法律が決まるというわけではないのが、この国の立法の難…

教員の「根本的」働き方改革

2024年から、これまで時間外労働の上限規制の対象とならなかった物流業界や医療界も規制対象となる。これが「2024年問題」で、いずれも人手不足な上に規制が加われば社会問題を引き起こすと懸念されている。 これらほど目立たないが、実は教員の残業時間の多…

通信の秘密をめぐる報道

先週末、ある程度予想していた記事が出た。報じたのは朝日新聞が最初だった。その後NHKのTVニュースでも同様の内容が伝えられている。 「通信の秘密の保護」に制限検討 サイバー攻撃への対処、政府が強化 [岸田政権]:朝日新聞デジタル (asahi.com) 憲法21条…

IT産業人の生存率

マイナンバーに代表されるシステムトラブルも目立ち、このところ苦戦が続く大手SIerの富士通(株)。その動向について、先週2つの記事が目に留まった。 〈みずほ〉と富士通、システム開発・保守に生成AIを活用する共同実証実験を開始 : 富士通 (fujitsu.com…

官製アプリではイノベーションは無理

先週「Fourth QUAD Open RAN Forum」に参加して、そこでの「Beyond5G」つまり6G関連の議論について注文をつける記事を書いた。開発や設備投資を先行させても、キラーアプリケーションが育たなければ、後発国に追い越されるし普及もしない。5Gでは中国の後…

サプライヤーも対象か?

経済安全保障推進法の4項目の中で、私たちサイバーセキュリティ関係者が一番重視しているのが「重要インフラ事業者への行政の審査」という項目。特にサイバー攻撃への耐性に係るもので、重大な脆弱性がないかなどのチェックを事業者任せにせず、監督官庁が…

「会社は誰のものか」論争

欧州各国では、ストライキが頻発している。原因は物価高と行政サービスの低下、賃金が(思ったほど)上がらないこと、社会福祉の切下げ、国民負担の増加などさまざまだが、一般市民の不満がかつてないほど高まっていることは間違いがない。これを受けて、富…

QUADでの次世代インフラ論(後編)

ローカル5Gは、工場内のような閉じた場で、教育・訓練・シミュレーション等に役立つことは分かっている。しかし広域5Gはどうなのだろうか、私は高速道路や主要道路での自動運転が一番近いキラーアプリケーションだと思っているが、確信はまだない。昨今の…

QUADでの次世代インフラ論(前編)

この日はいつ雨が降りだすか分からない空模様の下、六本木のグランド・ハイアットにやってきた。ほんの1週間前に、知り合いの米国法律事務所の人から、イベントの案内があったからだ。それは「Fourth QUAD Open RAN Forum」という会合。主催は、Open RAN Po…

スパイ防止法はなくても

米国のトランプ前大統領が、37の罪状で起訴され、その全てを否認したと伝えられる。TOP Secret(最高機密)に区分される文書も持ち出していて、これはスパイ防止法違反にあたるだろう。一方日本では、 ・スパイ防止法がないのは問題 ・各国の諜報機関がピク…

利用技術/産業こそが重要

生成AIのブームにあたり、各国の開発競争も激しくなっている。G7広島サミットではAIを巡るルール作りをすることを定めた「広島AIプロセス」が公表されている。AIの健全な発展に向けて、悪用を防止しながら技術開発/利用をすすめようということだ。一部の識…

日台情報セキュリティ交流(後編)

日本でもセキュリティをビジネスにしようとすると、顧客のIT部門との軋轢があり、IT部門が納得してくれても、管理部門という壁があったことを説明した。それを乗り越えるには「サイバーセキュリティは経営課題」だとCEOに理解してもらうことだ。経団連や政府…

日台情報セキュリティ交流(前編)

私の所属するシンクタンクは、台湾工業技術研究院(ITRI)との交流を続けている。きっかけは、2018年に世界を代表する半導体ファウンダリTSMCが、サイバー攻撃で3日間操業を止められたことに由来する。ITRIは台湾政府の意向を受けて、2019年にサイバーセキ…

アルメニア・アゼルバイジャンの和平

ロシア・ウクライナ紛争の和平に関して、いろいろな国が提案をしているが、現状では和平交渉が始まる気配はない。提案している各国も「言いましたよ」程度の提案だとする有識者の意見もあった。 一方長年紛争が続いていた、アルメニアとアゼルバイジャンの紛…

鉄道輸出、デジタル屋からみた「コア」

日本の鉄道技術は世界一・・・いや少なくとも世界有数である。「弾丸列車」の異名をとった東海道新幹線の開業は、1964年。それ以降日本各地に延伸していきながら、飛び込み自殺などの例を除いて死亡事故はほとんどない。かの東日本大震災でも、脱線しただけでク…

給与も時価会計に

少子化対策として3兆円台半ば/年というが、その財源論がかまびすしい。行政改革(何らかの支給の削減)はいいとして、1兆円ほどの不足分をどうするか、 ・社会保険料増 ・つなぎ国債 ・増税 など、様々な議論が出ている。子ども手当や教育無償化では不十…

マイナンバーカードの本質

政府が普及に力を入れているマイナンバーカードで、トラブルがいくつか報告されている。 ・コンビニで証明書を発行したら別人の書類だった ・「マイナ保険証」では別人の情報が登録されていた ・マイナポイントが誤って付与されていた ・紐づけされる銀行口…

ロシアや中国へのサイバー攻撃

とかく国家によるサイバー攻撃というと、私たちはロシアや中国、北朝鮮によるものと思いがちだ。しかし、彼らから見れば、最大のサイバー脅威は米国である。私の所属するシンクタンクでは、中国政府などの現地での報道も分析していて、サイバー攻撃を受ける…

雇用流動性と経済成長

今週のNHK「日曜討論」で、各政党の政策責任者が集まって、少子化対策とその財源などについて議論してくれた。私が注目したのは、経済成長が止まって特に若い世代の収入が増えていないことが少子化に拍車をかけているし、教育費の負担が重いのではというテー…

セキュリティクリアランス制度の論点

今週政府の有識者会議は<セキュリティクリアランス(SC)制度>の創設に向けた論点の骨子案を公表した。現在公務員については「特定秘密保護法」が適用され、重要機密漏洩等について、罰則が科せられる。しかし重要機密を民間と共有しているケースもあり、…