梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

中小企業の外形標準課税

大企業と中小企業の区分は、税制上からは資本金1億円という境目がある。この数年、大企業が業容はそのまま資本金だけ減らす「減資」という措置をして、中小企業の区分に入るということが増えている。最初にこのようなことを耳にしたのは、私たちも「COVID-1…

国連安保理でのAI規制論

先週、国連安保理で初めてAIに関する議論が行われた。ウクライナ紛争や北朝鮮のICBM問題など、常任理事国ロシアの拒否権があって、実効ある措置が採れない会合である。しかし軍事の世界において、 ★戦略級:OSINT、SIGINTなどのデジタル情報なしに戦略策定は…

フリーアクセス医療の課題

日本の多くの健康保険組合の財政事情は、厳しいと伝えられる。医療技術の進歩や長寿命化は決して悪いことではないのだが、これまでより医療費がかさむことは間違いはない。そこで健康保険組合連合会(健保連)では、いくつもの改善提案をしている。その中に…

AI規制はまずソフトローから

サイバー空間での動きは眼に見えない。その上サイバー空間には国境がなく、国内法が適用される保証もないし、そもそも「有体物法」ではデータの窃盗などは罪に問えない。加えて技術の進歩や、適用分野やシーン(*1)の広がりが極めて速い。法規制を検討しよ…

FTCカーン氏の巨大IT叩き(後編)

FTCはマイクロソフトのアクティビジョン・ブリザード買収(*1)阻止に向けた審判手続きを停止したので、両社は8月末に予定していた買収期限を3ヵ月伸ばしはしたものの、買収完了に向けて前進できたことになる。 ただバイデン政権は、今回の件はさておき、…

FTCカーン氏の巨大IT叩き(前編)

バイデン政権が誕生した時、人事として一番驚かされたのは、FTC(*1)のトップに当時32歳と若いリナ・カーン氏が就任したことだった。パキスタン人の両親からロンドンで産まれたコロンビア・ロー・スクールの准教授。専門は反トラスト法である。以前から巨大…

サイバー空間の国境問題(後編)

サイバー空間での国境問題がはっきりしないゆえ、種々の問題が起きている。いちはやくサイバー空間を国家主権の及ぶところと宣言した中国では、 サイバー空間での国家主権 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp) で紹介したように、SNS上で香港独立を主…

サイバー空間の国境問題(前編)

「サイバー空間には国境がない」と、Global & Digitalを推進する私たちデジタル政策を担当する者たちは言い続けてきた。しかし、この空間には従来の国家主権が届かないゆえに、 ・法秩序が不十分で、無法地帯に ・個人情報保護や特許権、著作権などで不具合…

映画界を生成AIが揺さぶっている

今週「Mission Impossible」最新作のプロモーションで来日するはずだった、トム・クルーズはやってこなかった。米国俳優労組がストライキに入ったからで、広報・宣伝活動もできなくなったからだ。ストライキの規模は43年振り、脚本家も同時にストライキを打…

2025年に「デジタル課税」発効?

欧州各国が「デジタル課税」の導入をもくろんでいることを聞いたのは、おそらく5年ほど前。その後、欧州委員会・G7・OECD・G20などの場で議論されていることは知っていて、最近では、 デジタル課税の遅れはいいとして - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.…

クリアランス制度の適性評価

先週の<日経ビジネス誌>に、日本でのセキュリティ・クリアランス制度(SC)に関する記事が掲載された。私もコメントを寄せさせてもらっている。 日本型セキュリティー・クリアランス、米国は「同等」と認めるか:日経ビジネス電子版 (nikkei.com) 私の主張…

情報工学と文学

私が工学部の情報工学科に入学したのは、1974年のこと。クラスは44名が在籍していて、あれから50年にもなろうというのに何人かで集まることができるのは望外である。何人かは鬼籍に入ったが、比較的早い時期に2/3ほどのメンバーのメルアドが共有できていたの…

「AIの定義」を今こそ(3/終)

2年前から「AIの定義」を求めていたのに、なぜ今取り上げるのかというと、AIの利用分野が当時よりずっと広くなってきているから。例えば医療業界では、 医療現場でAIが「やっていいこと」と「やってはいけないこと」…AIによる医療事故の責任の所在(奥 真也…

「AIの定義」を今こそ(2)

「AIの定義」を考えなくてはと、私が思ったのは2020年ごろ。国内の話ではなく、やはり欧州委員会との議論の場でだった。 欧州が示したAIの定義 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com) で紹介したように、通常システムまで全部を包含するような定義を主張…

「AIの定義」をいまこそ(1)

「生成AI」が華々しく登場し、普通にWebブラウザでも使えるようになって、様々な分野での活用やそれと並行した危惧が伝えられている。最近購読を始めた<MIT Technology Review>でも、人気記事の上位はAI関連が常に占めている。 今でこそ、研究機関や企業は…

官民連携はあくまで対等で

政府がサイバーセキュリティ戦略本部会合を開き、重要インフラ企業にサイバーセキュリティ対策強化の指針を示した。このところのサイバー脅威の増大(*1)もあり、社会的責任の大きい重要インフラ企業の防御力は、社会の安定に不可欠だ。 サイバー攻撃の経営…

これもAIの悪用事例

最近はまだ十分明るい夕方19時前、NHKニュースを見ようとTVのスイッチを入れる。ちょっと早いと<ニュース7>の前の<首都圏ネットワーク>をやっている。そう18:52くらいだろうか「私たちはだまされない」というコーナーがある。オレオレ詐欺対策のコーナ…

日ASEANのデータ越境基盤

「DATA Driven Economy」である現在では、企業が活用できるデータの質と量が、その企業の成長に深くかかわってくる。質の中には、そのデータがタイムリーに使えるかも含まれるし、量の中には役に立つデータという意味も含まれる。私は、企業のデータ活用には…

「Active Cyber Defence」の具体策

もう20年以上サイバー脅威は存在していたのだが、多くの人がそれを知るようになったのは数年前からだろうか。2017年にランサムウェア<NetPetya>が世界で暴れ回って、日本企業も被害を受けた。少なくとも大企業の経営者、関係者は目が覚めたはずだ。 ロシア…

マイナンバーカード騒動で支持率低下

通常国会で重要法案を沢山通し、安倍政権でもできなかったことを多く成し遂げた岸田政権。順風満帆に思えたのだが、思わぬところで躓いてしまった。それがマイナンバーカードの信頼性。主にデータ入力時のミスのようだが、銀行口座が別人に紐づいていたり、…