梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

デジタル社会はエネルギー革命を求む

先ごろの<ダボス会議>では、OpenAI社のサム・アルトマンCEOが「AIには原子力(発電)が必要」と発言した。AIの優秀性は知られているが、結果を導き出すにあたっては大量の電力を必要とする。脳の消費エネルギーに対して、現状の技術では数ケタ上のエネルギ…

最後の希望が消えようとしている

昨年10月のハマスによる奇襲攻撃に、国連機関UNRWAの職員12名ほどが協力していたとの報道があった。すでに疑惑の領域ではなく、UNRWA自身が9名の容疑者(の犯行)を特定し解雇し、「1名はすでに死亡、残る容疑者を内偵中」と発表している。 UNRWAはガザ地…

共同システムのオープン化は朗報だが

私は現役時代、銀行システムに携わっていたことが10余年ある。開発や保守ではなく、どうしたら業務をデジタル化して改善するかという仕事(現在でいうならDX企画)だった。そのため銀行業務の現場を取材したし、当時の「金融Big-Bang」の潮流も勉強した。そ…

2つの「Royal Think-Tank」

ロンドン訪問最終日のこの日、2つのシンクタンクとの会合が予定されている。午前中は、議論に内容の公開について定めたルール(*1)でその名を知られるチャタムハウス。正式名称を、王立(Royal)国際問題研究所という。 ここでは、予期(Anticipation)を…

国家サイバー諮問委員会との会合

この日訪問するのは、急増するサイバー脅威に備えるため、英国政府が2022年から活動させている国家サイバー諮問委員会(National Cyber Advisory Board:NCAB)。民間や第三セクターの有識者たちが集い、政府の活動に資する調査や議論をしている機関だ。日本…

科学・イノベーション・技術省訪問

次の訪問先は、昨年スナク政権の下で再編されたデジタル関連を管掌する科学・イノベーション・技術省(Department for Science, Innovation and Technology:DSIT)。日本のデジタル庁の機能に加え、電気通信事業の規制を担当するから総務省の一部、研究開発・…

国家サイバーセキュリティセンター訪問

次の日の午前、訪問先は国家サイバーセキュリティセンター(National Cyber Security Centre:NCSC)である。こちらはれっきとした政府機関で、外務・開発大臣麾下の政策通信本部(GCHQ)の一部門。訪問者にも本名を明かさず、一部の人(管理者?)を除いて…

英国国家戦略研究所(IISS)訪問

今週は、経団連の訪英ミッションに同行してロンドンにやってきている。目的は、サイバーセキュリティ関係の日英連携強化。政府機関やシンクタンク、関連企業などを巡って意見交換をする4泊6日の日程である。 この日の主目的は、民間シンクタンク国家戦略研…

世界の10大リスク2024(WEF)

昨日に続いて「世界の10大リスク」。ダボス会議が今週行われたが、WEFもこれを公表していることを関係者に教えてもらった。世界の名だたる経営者が集まる会合だから、軍事関係者ではなくグローバル企業の経営者向けのリスク分析だ。当面2年間と、中期10年間…

世界の10大リスク2024(ユーラシアG)

今年もイアン・ブレマー<ユーラシアグループ>が、世界の10大リスクを公表(*1)した。 1位 米国の分断 2位 瀬戸際の中東 3位 ウクライナの事実上の割譲 4位 AIのガバナンスの欠如 5位 ならず者国家の枢軸 6位 経済回復できない中国 7位 重要鉱物の…

たかがゲーム、されどゲーム

昨年末、中国の習政権がオンラインゲーム規制案を公表するや、テンセントなど関連企業の株価が急落した。約11兆円の時価総額(*1)が吹き飛んだとする報道もあった。たかがゲームなのだが、スマートフォンとインターネットが当たり前の中国では、非常に重要…

ITベンダーの責務(後編)

IBMがコンピュータの代名詞だった頃に出来た<IBM互換機市場>、それは決して長くは続かなかった。Appleが登場し、IBMがルーツとはいえPCがポピュラーになり、クライアントサーバーシステムがメインフレームを駆逐していった。今は多くのコンピュータ資源が…

ITベンダーの責務(前編)

英国国有企業ポストオフィスが、民間郵便局長700人以上に横領の罪などを着せたとされる、英国史上最大の冤罪事件の全貌が日本にも伝わってきた。原因は勘定系システム<ホライゾン>のバグで、金銭収支が合わなくなったことを局長・局員の不正だとしたことに…

TikTokとサブリミナル

中国と(政治的に)距離をとる国で、中国企業バイトダンスのサービス<TikTok>禁止の動きが広まっている。ただ支持率低迷に悩み、秋に大統領選挙を控えるバイデン政権は、若者に多い利用者の反発を恐れて全面禁止の措置には及び腰だともいう。 各国で続く政…

サプライチェーン・ガバナンス(後編)

もう1社は、グローバルでその種のコンシューマ品ではシェア1位の大企業。その日本法人の人が、ガバナンスされる側のことを話してくれた。欧州ドイツ語圏に本社のあるその企業にとって、日本市場は「One of Them」。世界を5ブロックに分けたうち、オースト…

サプライチェーン・ガバナンス(前編)

どんな企業でも、1社でビジネスが完結するはずはない。本社だけ、あるいは関連グループ企業だけサイバーセキュリティを行っても、サプライチェーン攻撃によって事業停止に追い込まれることがある。ただ、資本関係がない企業群やグローバルに散らばった事業…

大川原化工機事件に見る不安

昨年末、ある意味珍しい判決が出た。噴霧器などを製造販売している大川原化工機の社長ら3名が逮捕・起訴されたものの、初公判直前に基礎が取り消された事件について、司法は「警視庁公安部と東京地検の捜査が違法である」として、国と東京都に賠償金支払い…

歪んでしまった<ふるさと納税>

師走は「お師匠さんも走る」ほど忙しく、駆け込みの何かが多い季節。最近は振替・振込もなどの決済物は自動化され、かつてほどの繁忙ではないようだが年末期限というものは存在する。昨年末も、ネット広告などで「ふるさと納税、お急ぎください」のメッセー…

偽情報配信を厳罰に処したい

元旦・2日と大きな事故、事件が起きてしまった。能登沖の大地震では60名程の死者が出、多くの建物が倒壊・炎上した。1,000年の歴史を誇る輪島の朝市など、焼け野原である。加えて、北陸地方救援に向かうはずだった海上保安庁の航空機が、羽田空港滑走路でJA…

誰だって「Next Career」を考える

新年の名物と言えば<箱根駅伝>。往復200kmもの距離を走り抜けるレースで、沿線の年賀事情や風景も楽しめるTV番組である。登場するランナーは、さぞ鍛えぬく毎日を送っているのだろうと、ぼんやりTVを見ながら思う。しかし脚光を浴びた選手たちでさえも、「…